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グローバル化時代の文化 仏の社会学者 フレデリック・マルテル氏に聞く

2009年1月25日11時24分

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■自らを開放・多様化せよ

 グローバル化時代に創造的な文化を支えるシステムはどうあるべきか――。広範な取材による実証的研究で米国文化の従来のイメージを一掃したと米仏で評価が高い『超大国アメリカの文化力』の著者でフランスの社会学者のフレデリック・マルテル氏に、来日を前に聞いた。

 ――米国文化の席巻は巨大な資金力を武器にした文化帝国主義と批判されがちですが、実際はどうですか。

 世界への普及という点で市場の力は大きい。ある部分では帝国主義的でもある。しかしそれだけではない。文化省がない米国にも市場原理一辺倒ではない文化システムがある。市民社会や公的機関、マイノリティーの共同体、企業といった多様な担い手による複雑な構造は外から見えにくいが確かに存在する。

 また米国文化が世界で売れるのは、その多様性による部分も大きい。米国は世界中から来た人々の社会だ。米国で売れれば世界でも売れる。

 ――米国一極支配の時代は終わったとも言われます。文化支配も弱まりますか。

 相対的な問題だ。数カ月前にパレスチナに行った。だれもが米国を嫌うけれど米国の音楽や映画、スターは人気だった。フランス人も「スパイダーマン」を見る。欧州でも同性愛者などマイノリティーの権利要求運動や女性解放運動は米国がモデル。強いソフトパワーが米国にはある。

 ――もっぱら国家など公的機関が支えるフランス型文化政策はグローバル化時代に生き残れるのでしょうか。

 仏システムがグローバル化で困難に直面しているのは事実。内向きだし以前ほど公的資金も豊かではない。何もかもが国際レベルで動くのに仏文化は自らに閉じこもり、新しい環境から身を守ろうとする。しかし、グローバル化の中で強くなるには自分を開放し多様化しなければ。まず人口の10%程度のアラブ系イスラム教徒に対してもっと開くべきだろう。フランスで活躍した芸術家だって外の文化と深く関係している。ピカソはスペイン出身だ。

 ――グローバル化時代に各国文化は消える運命ですか。

 文化は特定の国に限定できるものでもない。国境内に閉じこめられない。逆に外に開放して他の文化を受け入れなければ。フランスのように自国文化を擁護する目的で外国の映画上映やテレビ番組の放送を制限するのは問題だ。グローバル化時代に人々が見たいものを遠ざけることはできない。

 ――グローバル化で文化システムがどこでも米国流になることはないですか。

 各国にはそれぞれの歴史がある。フランスが米国流をそのまま採り入れてもうまくいかない。その逆も同様だ。ただ、お互いのやり方を参考にするのは望ましい。

 オバマ米大統領は、景気刺激策に文化分野も含める考えらしい。文化関係の諸機関を統合して強化する考えもあると聞く。欧州のシステムがヒントだろう。こういう経験の共有はいいことだ。(パリ=大野博人)

     ◇

 マルテル氏は2月4日に東京芸術劇場で開かれる国際シンポジウム「今日の文化を再考する」(朝日新聞社後援)に参加する。パネリストはほかにジャック・ラング元仏文化相、作家の辻井喬氏、劇作家の平田オリザ氏ら。予約はオンライン(http://festival−tokyo.jp/event/)で。『超大国アメリカの文化力』の邦訳は岩波書店から1月29日に発売予定。

     ◇

 67年生まれ。作家、ジャーナリスト、社会学博士。01年から4年間、在米仏大使館の文化担当官。このときに米国の35州で文化関係者約700人にインタビューして『超大国アメリカの文化力』を書いた。ほかに『薔薇と黒/1968年以降のフランスの同性愛』などの著書がある。

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