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芥川沙織展/青木野枝新作展 「不自由な線」から自由に表現

2009年3月18日16時21分

写真:  

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 たいていの美術表現は、自由な線から始まる。なのに、引き直せない「不自由な線」から、表現を紡ぐ二人の女性の作品展を見た。

 まず、芥川(間所)紗織(1924〜66)の見応えある回顧展。50年代に叫ぶ女性像や「神話」シリーズで脚光を浴びたが、多くはろうけつ染めなどの染色で描いている。やり直しがきかない上に何度も染めたりろうを抜いたり、と油絵などに比べて誠に迂遠(う・えん)。なのに、作風は奔放にして迫力満点で、鮮やかな色彩の画面を引っかいたような線が覆っている。

 それは全長約13.5メートルの大作「古事記より」(57年)でも現れ、嘆き悲しみ剣を振るイザナギなどが激しくもユーモラスに描かれているは展示風景。それでいて押しつけがましくないのは、染色表現の平面性のゆえか。一方で、土俗的な力にあふれて見えるのも、工芸の手法である染色を使っているから、と思える。

 東京音楽学校で声楽を学び、芥川也寸志と結婚。作曲家の傍らで歌うことを遠慮し、美術に転じた。彼女の描く女性像に口を開けて怒るような姿が多いのは、世の中全体に今より闘争の空気が濃かったこともあるだろうが、歌えぬことへの心の叫びにも見える。

 也寸志と離婚後は色面による抽象画となり、いら立つような線も消える。不自由な染色の線を選んだのは、無意識のうちに自身の不自由さに重ねたからとも思える。

 不自由な線による自由な表現なら、現役の青木野枝(1958〜)が上をゆく。鉄板を線状に溶断して、柔らかく空間を満たす立体を作る。今回の個展は、従来にも増して軽やか。大小の鉄の輪を連ねて床から天井にまで達した立体が、重力に抗するように逆円錐(えん・すい)を描くからだろうし、輪が水泡さながらの浮遊感を見せるからだろう。過去の作品よりも、薄い鉄板を使っているのだという。

 鍾乳洞というより、風が抜ける森。芥川の頃とは異なるであろう時代の空気も漂う。(大西若人)

     ◇

 芥川展は22日まで、神奈川県横須賀市鴨居の横須賀美術館。5月に愛知県・一宮市三岸節子記念美術館へ。青木展は28日まで、東京・東日本橋3の5の5のspace355。日・月曜、祝日休み。

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