2009年6月6日14時13分
東京国立博物館の「国宝 阿修羅展」も、あと2日。連日満員続きで、来場者数は90万人目前だ。近年、仏像展や仏像本の人気は高く、そのピークともいえそうだ。仏教や美術史への関心の高まりというよりは、若い世代を中心に、素直に仏像と向き合う「実感重視」の傾向があるという。
■関心、日本絵画から広がり
05年の「唐招提寺展」が約40万人、06年の「仏像」展が約34万人、08年の「国宝 薬師寺展」が約79万人。近年、東京国立博物館で開かれた仏像を中心とする展覧会は、いずれも盛況だった。
ブームの様相は、本の世界にも現れている。例えば07年5月から配本された分冊百科「日本の仏像」(講談社)は1巻目で、初版を23万5千部から25万部に増刷。雑誌「サライ」(小学館)も昨年夏に「仏像の見方」を、先月にも「続・仏像の見方」を特集。計32万部を超えた。若い男性を主な読者とする雑誌「ブルータス」(マガジンハウス)も4月に「仏像」を特集し、約11万部が売れた。
ブームは、なぜ訪れたのか。
明治学院大教授(日本美術史)の山下裕二さんは、複合的な要素を指摘する。
まず、以前からの中高年ファンの関心が、各地のお寺を訪ねながら仏像を楽しむといった形で「旅」と絡み、一層高まった。さらに20〜30代の女性ら若い世代が参入したのが、今の現象の特徴とされる。阿修羅展でも、若い鑑賞者が目立つという。
「インターネットの影響は大きい」と山下さん。本を開かなくても、画像を見られて拡大もできる。そのとき、日本の仏像は、細部を見る楽しみにあふれている。伊藤若冲らの精巧な絵画から盛り上がった日本美術への関心が、仏像にも広がったのだ。
「熟年にとっては心洗われる存在でも、若い層にはフィギュアを楽しむ感覚の人も多いのではないか。仏教や美術史としてではなく、仏像を見た実感から、日本の美を再評価しているように思う」
「ブルータス」で美術特集を手掛けてきた副編集長の鈴木芳雄さんも「若冲あたりから、日本美術は自分の好きなように見ていいという感じが現れた」と指摘する。