2009年6月8日11時37分
■出版大手らブックオフ株取得で焦点
講談社、集英社、小学館の出版大手3社と大日本印刷グループ(大日本印刷、図書館流通センター、丸善)によるブックオフ株取得で、出版社側とブックオフの間で「万引き本の買い取り防止対策」が焦点の一つに浮上している。一方、大日本印刷グループの新たな戦略も骨格を見せ始めた。
■発売日に棚に
これまで、発売されたばかりの話題の本がその日のうちにブックオフの棚に並ぶことがあり、「万引きされた商品ではないか」と出版社・書店側は疑いの目を向けてきた。講談社の森武文常務は「万引きは業界最大の問題のひとつ。万引き被害で経営が圧迫され、店を閉める書店すらある。ブックオフは買い取りルールを厳密にしてほしい」と話す。出版社側には、業界トップのブックオフとルールを定め、他の新古書店にも及ばせたいという狙いがある。
一方、ブックオフの佐藤弘志社長は「万引き本は我々もナーバスになっている問題。でも現状では難しい」と話す。持ち込まれた本が万引きされたものか、現物を見ただけでは分からないからだ。
この問題で、大きな役割を果たしそうなのが大日本印刷が開発中の電子タグだ。書籍1冊ずつにつければ、書店のレジを通ったか否かがわかるようになる。森野鉄治常務は「3年から5年で実用化したい」と話す。大日本印刷がブックオフ株取得を主導した背景には、電子タグの商機にしたいという思いもあった。
■「全店に整備」
電子タグの導入案にはブックオフの佐藤社長も積極的で「そうなれば、読み取り機を全店に整備する」と言う。
今回の株取得で出版3社とブックオフの間で中心になって動いたのは、産業再生機構でカネボウ社長として企業再生の指揮をとったこともある丸善の小城武彦社長だった。
万引きだけでなく、新刊書が売れない一因とされるなど、これまで出版社にとってはブックオフは「敵」だった。しかし小城社長は「新刊を買いたくても、いまの住宅事情では部屋に入らない。ブックオフは新刊を出す出版社にもメリットはある。一定のルールの下で関係が正常化すれば、我々も新刊を買ってもらえる」と、新ルール作りの重要性を強調している。
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丸善やジュンク堂書店、図書館流通センター(TRC)を次々と子会社化した大日本印刷。5月には主婦の友社と資本提携した。森野常務は「必要な情報を、必要なときに、必要な人に提供して課金する新たな仕組みを作る」と言う。主婦の友社には、大日本印刷が得意とするデジタル制作技術を導入する。デジタルコンテンツと紙媒体を別々に作るのでなく、最初からマルチメディア展開できるようにしてコスト減を図る。
図書館への書籍販売会社であるTRCは近刊の詳細な書誌データを使って通信販売するノウハウを持つ。全国の公共図書館の8割が利用する。大学図書館などへの売り上げが5割を超える丸善は訪問販売が主体だが、TRCの石井昭会長は「我々のノウハウを導入すれば、ずいぶん合理化できる」と語る。ジュンク堂の工藤恭孝社長は「システムやデータ管理の開発をまとめてやってもらいたい。大日本印刷には傘下企業の行司役を期待する」と話している。(西秀治、竹端直樹、久保智祥)
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〈キーワード〉書店の万引き被害 出版社や書店などでつくる日本出版インフラセンター(東京都新宿区)が昨年、紀伊国屋書店、三省堂書店など大手書店14社を対象に調査した。643店舗から回答があり、万引き被害の額は年間約40億円。総売り上げの1.4%にあたる。全国の書店約1万5千店舗で同じ割合で万引きがあったとすると、被害額は約190億円と推計した。
店側が捕らえた万引き犯が盗もうとしたのは、金額ベースで見るとコミックが最も多く全体の40.7%。単行本(一般書)は10.6%で、文庫・新書が4%だった。万引きの目的は「新古書店での換金」が70%を超えると推計され、万引き本の7割が新古書店に持ち込まれている可能性があるという。