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日本の土器、世界最古なの?

2009年10月3日11時6分

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 「日本の土器が世界で一番古いってホントなの? なんでなの?」。半月ほど前、会議の席上、特捜隊長から突っ込みを入れられた。「そういえば変ですね。でも、なぜか、そういうことになってるんですよね」と、文化財・歴史担当ながら、答えにならない答えをつぶやいた私。「土器が生まれた理由も含めて調べてみてよ」との一声で、調査を始めることにした。

    ◇

 東京・池袋のサンシャインシティにある古代オリエント博物館を訪ねた。世界各地の古い土器など、約200点を集めた展覧会「世界の土器の始まりと造形――ドキドキ! 土器って面白い!」が、11月29日まで開かれている。

 同館研究員の津本英利さん(西アジア考古学)に聞くと、「今のところ、東アジアの土器が世界で一番古いのは間違いありません」と答えてくれた。

 現在、世界最古と考えられる土器の一つが、青森県大平山元(おおだいやまもと)遺跡の縄文土器=写真、上2点は石器=だ。放射性炭素年代から推定すると、約1万6千年前。これらのことから、多くの研究者は、遅くとも1万5千年前には、日本列島で土器が使われていたと考えている。

 ところが、他地域の最古の土器をみると、南アジア、西アジア、アフリカが約9千年前、ヨーロッパが約8500年前――。学校で習ったいわゆる「四大文明」の故地と比較しても、日本は飛び抜けて古い。

 「でも、ロシアのグロマトゥーハ遺跡などでは、約1万5千年前と考えられる土器が見つかっています。日本だけが古いと言うより、東アジア全体で古い時期に土器が生まれた、とみるべきではないでしょうか」。中国湖南省で、約1万8千年前のものとされる土器が確認されたとの報告もある。

 もっとも、なぜ東アジアなのかははっきりしない。ただ、中央大准教授の小林謙一さん(日本考古学)は、「土器の誕生は、当時の環境の変化と深いかかわりがあると考えられます」と説明する。

 小林さんは14日から国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)で始まる「縄文はいつから!?――1万5千年前になにがおこったのか」展を企画。日本では、氷河期が終わりに近づいた約1万6千〜1万5千年前、気温上昇にともない、亜寒帯的な森林から落葉樹も交じる森林へと変化した。「その結果、ドングリなどの植物質の食料が入手しやすくなり、それらを食べるためのアク抜きに必要な容器として、土器が生まれたのではないでしょうか」

    ◇

 ちなみに現在、国内最古と考えられているのは模様のない「無文土器」。主に東日本で出土している。だが、約1万4500年前ごろになると、粘土ひもをはり付けた「隆線文土器」と呼ばれる土器が生まれ、全国へ広がる。「堅果類であるコナラ、カシ、シイなどの分布が広がったことで、土器も普及したのだと思います」と小林さん。

 一方、やはり最古級の土器が出土したロシアでは、防寒や調理に使う「魚油」をとるために、魚を土器で煮ていた可能性が指摘されている。「土器使用の始まりには、漁撈(ぎょろう)も大きくかかわっているとにらんでいます」と、古代オリエント博物館研究部長の石田恵子さん(西アジア考古学)。生まれた理由も様々なのかもしれない。

 さらに、土器はある一カ所で誕生し、広がったのではなく、おそらく複数の場所で前後して発明された可能性が高い。

 日本列島に関しても、「最古級の土器は東日本に多いが、遅くとも約1万3千年前ごろには鹿児島でも無文土器が使われていると思う。北と南で別個に土器が生まれ、それらが広がったと考えるべきだ」と、南九州縄文研究会代表の新東晃一さんは指摘する。

 でも、土で作られた容器としての土器が、中東などでどうして、なかなか作られなかったのか。筑波大教授の常木晃さん(西アジア先史学)によれば、西アジアでは「土器の利用以前から、焼成された土製品は作られていた」という。「つまり、彼らは『粘土を焼くと硬くなる』ことを知っていたんです」

 だが、実際に土器が使われ始めるのは9千年前。理由について、常木さんは「西アジアでは先土器新石器時代から小麦が主食。パンを焼くのに、土器を作る必然性はなかったのだと思います」と話す。

 少し前までの歴史学・考古学では、土器の誕生は、農耕や牧畜の開始、ひいては文明の発生と関連づけて論じられることが多かった。だが、近年の東アジアでの発見は、狩猟や採集を基盤とする社会でも、土器が必要とされ、生まれ得ることを示唆する。

 歴史発展のモデルは決して一つではない。「最古の土器」たちは、そのことを改めて教えてくれているのではなかろうか。(宮代栄一)

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