2010年1月13日14時46分
東浩紀さん=東京都渋谷区、高波淳撮影
「ゼロ年代」の思想・批評は「スカスカ」だった、と語る。それが、2000年から10年間の総括だ。
オウム事件や阪神大震災が起きた1990年代のように、社会の地殻変動を象徴する現象も見あたらず、千人、二千人にしか流通しない言葉が再生産されただけ。
「何の社会的影響力もなくなりました」
この間の思想シーンで“一人勝ち”したとも評される東さんだが、「思想・批評の凋落(ちょうらく)ぶりは出版不況どころじゃない。もっとずっと急速な動きだと思う」と危機感をあらわにする。
■「底」と認識せず
ただ、今が「底」だとの認識はないという。
「思想の話に限らず、世の中、底だ底だと言い過ぎます。過剰な不安感が挑戦を尻込みさせていることの方が、むしろ気になります」
「底って『かつて良かったものが堕落した』という価値観が入った言葉でしょ?難しいものが読まれなくなった、読者の質が悪くなった、という話になるけれど、では、今までの思想はそんなに質が高かったのか」
底との認識がないというよりは、そう認識することを拒んでいるかのようだ。ならば、スカスカを招いた原因をどう考えているのだろう。
「問題は市場をつかまえられなくなったこと。書き手が悪いんです」
2年前、社会学者・北田暁大さんとともに雑誌「思想地図」を創刊した際、理念より目標部数を強調した。市場での存在感が要る、との問題意識があってのことだった。
「政治から宗教、情報技術、文学、アニメまで、異なる事象や人物を貫く『問い』をぶつけ、従来あった視点を変換させる。それが僕の考える思想です」
「思想を立ち上げるには『力』がいる。力とは支持者=読者です。読者への迎合と呼びたい人は、そう呼んでください」