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門外不出「アルルの寝室」を見て、感じて! 「ゴッホ展」

2010年10月5日12時48分

写真:フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの寝室」(1888年)拡大フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの寝室」(1888年)

写真:原寸大で再現された「アルルの寝室」。制作は、ドラマ「JIN−仁」「ミスターブレイン」「華麗なる一族」などの美術を手がけたTBSの青木ゆかり美術プロデューサーのチーム拡大原寸大で再現された「アルルの寝室」。制作は、ドラマ「JIN−仁」「ミスターブレイン」「華麗なる一族」などの美術を手がけたTBSの青木ゆかり美術プロデューサーのチーム

写真:フィンセント・ファン・ゴッホ「ゴーギャンの椅子」(1888年)拡大フィンセント・ファン・ゴッホ「ゴーギャンの椅子」(1888年)

写真:フィンセント・ファン・ゴッホ「アイリス」(1890年) 以上3点(c)Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)拡大フィンセント・ファン・ゴッホ「アイリス」(1890年) 以上3点(c)Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

写真:フィンセント・ファン・ゴッホ「サン=レミの療養院の庭」(1889年)(c)Kröller−Müller Museum, Otterlo拡大フィンセント・ファン・ゴッホ「サン=レミの療養院の庭」(1889年)(c)Kröller−Müller Museum, Otterlo

写真:今展覧会の企画構成を務めた前ファン・ゴッホ美術館主任学芸員のシラール・ファン・ヒューフテンさん拡大今展覧会の企画構成を務めた前ファン・ゴッホ美術館主任学芸員のシラール・ファン・ヒューフテンさん

 情熱的な筆遣いと鮮やかな色彩で知られるフィンセント・ファン・ゴッホ。自らの様式と技法を発展させるまでに彼が誰にどのような影響を受け、何を考えたのか、その道程を掘り下げる「ゴッホ展」が1日から、東京・六本木の国立新美術館で始まった。多くを採り入れたゴーギャンやロートレック、モネらの作品のほか、長く門外不出だった「アルルの寝室」や「灰色のフェルト帽の自画像」などの代表作もオランダから出品されている。12月20日まで。

 ゴッホと聞いて真っ先に思い浮かぶ、あの鮮やかな黄色の色彩。「ひまわり」など数々の名画で用いられ、南仏のアルルでゴーギャンと共に住んだのも「黄色い家」。画家自身が最も好んだこの色は、今展覧会のテーマカラーにもなっている。

 まずは「アルルの寝室」(1888年)。魚眼レンズを用いたような極端な遠近法で描かれたこの絵も、鮮やかなバター色で描かれたベッドが画面の多くの部分を占めている。脇に置かれた木組みのいすも同じ色。柔らかな青紫の壁や、どっしりとした家具とも相まって、見る者に安息感を与えてくれる。

 「ゴッホにとって、一日のことを述懐するのに大事な空間であった寝室。その個人的な空間に触れることで、我々はパーソナルな感情を引き起こされる。美しい色彩も、直接的に語りかけてくるので、画家とのコミュニケーションが可能になるのです」

 今展覧会の企画構成を手がけた前ファン・ゴッホ美術館主任学芸員のシラール・ファン・ヒューフテン氏は語る。制作から年月が過ぎ、床は強い赤茶色に、壁やドアは濃い紫に変色していたのを最近修復し、今回初めて館外に持ち出したという。

 傍らには、実際の図面などから原寸大でこの寝室が再現されている。絵のイメージより随分と小さく感じられる空間だ。イーゼルを置いてカンバスに向かうことは困難なため、部屋ではスケッチだけにとどめ、後日アトリエで制作されたことがわかるという。

 続く一枚「ゴーギャンの椅子」(1888年)も黄色がアクセントに。座面に置かれた2冊の本。ろうそくの炎、壁にはランプの光、床。色調を変えた黄色が落ち着いた印象を与えている。敬愛するゴーギャンの想像力主義に影響を受け、空っぽのいすで普段そこに腰掛けている人物を表現した「肖像画」でもあるという。

 だが、そのゴーギャンとの共同生活も、ゴッホの耳切り事件という悲劇で突然幕を下ろし、精神を病んだ彼がたどりついたのがサン=レミの療養院だった。その庭で描いた「サン=レミの療養院の庭」(1889年)も、建物や荒れ放題の草、木々に多くの黄色が用いられている。

 病室内で最後の日々を過ごす間に描かれた「アイリス」(1890年)は、鮮やかなレモンイエローの背景に浮き上がる紫の花束がまばゆい。弟テオへの書簡でも「花瓶と台には別の黄色がある。花束と周囲のものは比較にならない激しい補色の効果を持っており、その対象の激しさで違いを強め合っている」と、黄色の有意性を語っている。

 明るく力強いその色合いに反して、不遇の歳を重ねついにはピストル自殺により37歳で生涯を閉じたゴッホ。画家になると決意してから10年というわずかな間に、いかにその画風を発展させていったかを、今展示作品は雄弁に物語っている。(アサヒ・コム編集部 柏木友紀)

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