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アニメフェア、抗議の出展拒否 東京都は作り手の声聞け

2010年12月28日14時39分

 東京国際アニメフェアというイベントがある。来年3月の開催で10回目になり、今年は13万2492人が来場。世界でも有数の規模を誇る。

 そんなイベントの開催が危ぶまれている。集英社や講談社など漫画を出版する10社が出展を拒否し、事務局を担う日本動画協会も「このままの状況で推移すれば実質的に実行不能」との声明を出した。

 原因は、15日に可決した東京都の青少年健全育成条例改正にある。都は過激な性描写がある漫画などの子ども向け販売を規制するとしている。

 作り手たちの反発や不安は根強い。販売の規制は、作り手の芸術表現を萎縮させる可能性がある。改正前の会見では、漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の秋本治さんが「普通のことしか描けなくなる」と訴えた。10社に限らず、表現者団体などが今も抗議し続けている。

 反発の一つには、都が作り手の声を聞かなかった経緯がある。都は条例改正を急ぎ、影響を被る作り手と条文について意見交換の場を持たなかった。10社が参加拒否を表明しても、フェアの実行委員長を務める石原慎太郎都知事は「来なくて結構。来る連中だけでやる」と切り捨てた。

 一方で東京都は、アニメを地場産業と位置づけ、商業利用に力を注いできた。

 東京国際アニメフェアは一般のファンの集いだけでなく、「ビジネスデー」が設けられている。今年は海外から1204人のバイヤーが参加。わずか231人だった第1回から、徐々に人数を増やしてきた。

 「もはや日本のアニメ関連ビジネスは、東京国際アニメフェアで行うのが一般的になりつつある」。そんな評価もあるほど、貴重なアニメ売買の場に成長している。実行委員会の鈴木仁さんは「経済産業省にアニメなどの産業を世界に売り出す『クール・ジャパン室』ができたきっかけの一つ」とも話す。

 石原知事も、パンフレットに「多くの方々に日本アニメの魅力とパワーを感じ取っていただければ幸いです」とあいさつ文を寄せている。「魅力とパワー」の源泉こそ、自由な表現だろう。

 商業的に利用するのなら、作り手の不信を解く必要がある。条例改正にあたり、「検討時間の確保など適正な運用に努める」などの付帯決議も可決された。だが出展を拒否した10社は「条例の在り方、運用について監視していく」と表明している。作り手に耳を貸さない姿勢をとり続ければ、「適正な運用」と言われて信用できるはずがない。

 事務局には、海外からも心配の声が寄せられているという。産業活性化を望むなら、都は作り手たちの気持ちを理解するべきだ。(高津祐典)

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