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民主主義2.0 ネットで「直接」政治(1/2ページ)

2011年1月6日14時41分

グラフ:各候補の得票数とブログ登場頻度(千葉県知事選)拡大各候補の得票数とブログ登場頻度(千葉県知事選)

 「民主主義2.0」と呼ばれる新たな民主主義の構想が近年、注目を集めている。インターネットに刺激された、未来の政治イメージだ。有権者がウェブ上で自分の1票を自由に分割・委任したり、人々の“無意識”をネットで吸い上げて政策に反映させたりと、SF的なアイデアが並ぶ。政治の言葉に閉塞(へいそく)感が漂う今、その想像力の射程を探ってみたい。(塩倉裕)

 情報技術が政治のあり方を根本的に変えていく。その先にある、まだ見ぬ政治像を表現する用語として民主主義2.0は生まれた。ウェブの新段階を示す用語として広まった「ウェブ2.0」からの転用だ。

 様々な構想が2000年代を通じて育まれたが、話題として広がり始めたきっかけは09年秋。批評家・作家である東浩紀さんがテレビの討論番組で、こう語ったのだ。

 5万人規模の自治体ならネットを使った直接民主制で運営できる、政治家も今ほど要らなくなる、と。

 新バージョンの民主主義。東さんは「民主主義2.0」と呼んだ。

 起業家で東京大学特任研究員の鈴木健さんは、「分人」民主主義という民主制の提案で注目される。キーワードは「分割」と「委任」だ。

 構想では、有権者はネット上で自分の1票を分割して使える。「宇宙政策には関心があるから0.8票を使おう。あとは教育と福祉に0.1票ずつ。ほかは興味なし」といった具合だ。分割は、矛盾した投票も可能にする。ある政策への賛否を決めかねた場合には、賛成案に0.7票を入れ、同時に反対案に0.3票を投じることもできる。

 興味のない問題については、票を他人に委任することもできる。1票まるごと託してもいいし、0.5票は自分で投票して残りを他者に委ねてもいい。委任された人がさらに別の人に委任することも可能だ。

 「政治的な意思決定に一人ひとりの思いが、より反映されるようになる」と鈴木さんは話す。全員が政策に直接投票すれば直接民主制になるし、すべての票が一人に委任されれば独裁制になる。「間接制か直接制かを各人がテーマごとに選べるので、有権者の満足度は高まる」

 批評家の濱野智史さんは、「キャラクラシー」を提唱している。バーチャルなキャラクターを政治家にして、そこに多くの人々の意見を反映させていこうという構想だ。

 キャラクターによるデモクラシーだから、キャラクラシー。濱野さんは、ネット上のバーチャル歌姫として知られる「初音ミク」を選挙に“出馬”させよう、と提案する。

 初音ミク議員の具体的な政策は、ネット上に集う匿名の支持者たちが決めていく。実際に国会に行く役目は、キャラクターの忠実な代行人になると宣言した実在の人物が担う。

 「現行の代議制に直接民主制を一部融合させた仕組みです。匿名でも、強い参加意志がなくても政治に参加できるから、日本人には合うと思う」と濱野さんは語る。

 東浩紀さんも雑誌「本」(講談社)に連載中の「一般意志2.0」などで、思索をさらに展開させている。東さんはネットを、人々の意識ではなく、人々の「無意識」を可視化する装置してとらえ直した。

 ブログへの書き込みや、ツイッターでのつぶやき……。そうした数百万、数千万もの個人情報が集積される場として、ネットはある。個別の政策について人々が何を望み何を望まないのか。検索と分析を使えば将来、有権者自身が意識していない願望までを吸い上げて表示することも可能になると、東さんは説く。

 そのとき、政策決定にかかわる会議は公開され、聴衆がどう反応しているかがネットを通じてリアルタイムで数値化される。結果は、討議する政治家や専門家たちの前にスクリーンで表示され、決定者は、目の前に表れた大衆の「集合的無意識」を無視することが難しくなる……。

 「直接民主制でも間接民主制でもない、言ってみれば無意識民主制とでも呼ぶべき、別の原理に基づく意志集約のシステム」だと東さんは記す。ネットに集積される「大衆の無意識」を「専門家たちの熟議の場」に反映させるのだ。「個人主義的な主体性が抹消されている仕組みなので、その意味では危険な思想でもある」とも東さんは指摘した。

 18世紀にルソーは『社会契約論』で、一般意志という概念を提起した。人民が社会契約を結ぶことで生まれる、人民の総意とされる。東さんは、ネットで可視化される「集合的無意識」こそが一般意志の21世紀的な表れだと、野心的な解釈を示す。つまり、一般意志2.0だ。

 「ルソーは集合的な無意識に導かれる社会を理想と考えたが、当時はそれを顕在化させる手段がなかった。情報技術の発展で今、私たちはその手段を手に入れつつある」

 分人民主主義を提起した鈴木さんは、人々の胃にセンサーを付けて生体情報をネットワークで収集する仮想の世界を例に、こう語っている。

 「戦争をするかどうかの政治決定では、脳に聞くより胃に聞いた方がいいという可能性もあるだろう」

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