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読まれるキリスト教 特集の雑誌・書籍、相次ぎ刊行

2011年2月21日11時19分

写真:続々と刊行されたキリスト教関連の雑誌や書籍拡大続々と刊行されたキリスト教関連の雑誌や書籍

 出版業界で「キリスト教」が静かなブームになっている。昨春以降、キリスト教や聖書を特集した雑誌や書籍が続々と発売され、おおむね売れ行き好調だ。このブーム、どんな背景があるのだろう。(浜田奈美)

■11万部、2週間で完売

 東京・丸の内の大型書店「丸善」。雑誌が並ぶ平台の真ん中に、男性誌「Pen」(阪急コミュニケーションズ)の新年合併号「キリスト教とは何か。II」と同誌の別冊「キリスト教とは何か。」、最新号で「聖書入門」を特集する「日経おとなのOFF」(日経BP社)が積み上げられている。

 専門書売り場担当の工藤吉隆さんはいう。「昨年の『Pen』を皮切りにキリスト教関連の雑誌や書籍が次々と出た。どれも、なかなか堅調です」

 発端の「Pen」とは、昨年3月号の特集「完全保存版 キリスト教とは何か。」だ。絵画や建築といった西洋美術を紹介しつつ、聖書の概要などを70ページ以上展開。初版11万部を2週間でほぼ完売し、特集を増補して同年5月に発売された別冊も初版の13万部を完売した。いずれも、書店に加えてコンビニエンスストアでもよく売れる、ふだんとは違う売れ方だった。

 「Pen」とほぼ同じころに発売された季刊誌「考える人」(新潮社)も、「はじめて読む聖書」を特集して好評だった。

 新約聖書学者、田川建三さんへの大型インタビューに始まる重厚な構成で、初心者にとってはやや敷居の高い内容だったが早期に完売し、同誌の中で最も売れた企画の一つとなった。

 以後、ムック「キリスト教を知りたい。」(昨年6月、学研パブリッシング)、新書『新約聖書I』『新約聖書II』(昨年10〜11月、佐藤優解説、文芸春秋)、版画家ギュスターブ・ドレの画集『旧約聖書』『新約聖書』(昨年11〜12月、宝島社)などが発売。今年に入っても「日経おとなのOFF」などへと流れは続いている。

■「歯切れの良さ、魅力」

 なぜキリスト教の企画が受けるのか。キリスト教を題材にした西洋美術の美しい「図版」は魅力的だが、「Pen」編集長の安藤貴之さんは「あえて企画をアート寄りではなく、教養としてのキリスト教入門に重点を置いた」と話す。

 「多くの人は西洋美術に接するたびに『キリスト教をもっと知っていたら理解が深まるのに』と思うものの、断片的な関心に終わっていた。その断片化した関心を結びつけた結果、読者の無意識レベルの知識欲を刺激したのではないか」

 「考える人」編集部の須貝利恵子さんは「以前の特集『海外の長篇小説ベスト100』で旧約聖書を挙げた人がいた」という。「聖書は壮大な物語として読めるし、神話や歴史、寓話(ぐうわ)や詩など文学表現のアンソロジーでもある。聖典としてではなく一冊の本として企画化したことが、読まれた理由では」

 2人の指摘の共通項は「知識欲」だ。確かに昨今、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)や『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)といった「プチ教養本」が売れている。

 では、なぜキリスト教か。

 「日本人は近代以後ずっとキリスト教に関心を持ち続けてきた」と宗教学者の島田裕巳さん。「それも信仰心の薄い日本人にとって宗教への関心ではなく、『なぜこんなに真剣にキリスト教なる宗教を信じる人々がいるのか』という関心です。ミステリー小説への関心に近い」

 昨秋、新書『聖書に学ぶビジネスの極意100』(ワニ・プラス)を著した作家の江上剛さんは、時代の閉塞(へいそく)感と「言葉」がカギだと指摘する。

 「(元首相の)小泉さんのワンフレーズは印象的だったが、イエスの言葉も歯切れがよい、いわば究極のワンフレーズ。政治も経済もリーダー不在の時代に、迷いを消してくれるものが聖書にはあるだろう、という期待の表れではないか」

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