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ウナギの卵発見チームの青山潤さん、採集旅行記を刊行

2011年3月1日14時19分

 ニホンウナギが海で産んだ卵を世界で初めて発見した研究チームの一員で、東大大気海洋研究所特任准教授の青山潤さんが、ウナギ採集旅行記『うなドン 南の楽園にょろり旅』(講談社)を刊行した。ウナギ全種の採集を続けてきた青山さんは、その体験を『アフリカにょろり旅』(2007年)に著しているが、今回はまだ研究者の卵だったころの記録だ。卵発見の裏に隠された執念と涙ぐましい努力が伝わってくる。

 青年海外協力隊員として2年間、ボリビアでニジマスの養殖技術を指導した青山さんは「大学で学んだ程度の知識は現場では無力だった」と、大学院進学を志し、1993年に東大海洋研の塚本勝巳教授のもとで研究者になった。カジカを研究する予定だったが、塚本教授から「ウナギの進化」を勧められる。「ウナギなら世界中の国に行ってもらうことになる」と言われて、テーマを変更。以来、ウナギにどっぷりつかる。世界のウナギ全18種(現在は19種)の採集にとりかかった。

 最初に向かったのはインドネシア。正式な調査ではなかったので、費用は青山さんと塚本教授が折半した。「今考えれば、ウナギの種類も見分けられない素人同然の学生をよく送り込んだと思う」

 ウナギはバリの市場で簡単に手に入った。しかし、ウナギにあるはずのひれがない。似て非なるタウナギだった。「今だったら、遠くから見ても一目で判別できるんですが」。島の若者たちが持ち込んだのもタウナギばかり。その山のなかにひれを「誇らしげに広げている」ウナギをついに発見した。

 「見てくるだけでいいと言われたが、塩漬けにして標本を作り、持ち帰った。遺伝子も壊れて学術的には価値はないが、今も標本庫に守り神のように保管されています。世界のウナギ研究の初めの一歩だった」

 スマトラでは、毒物を使ってのウナギ採りも目にした。「現地では生活の一部として使っていた。道徳的には許されないことで良心の痛みはあった」

 メガストマという種類のウナギを追って、塚本教授と後輩との3人で出かけたタヒチでは、ついに捕獲できなかった。「あの楽園に行って、一度も海で泳がず、ひたすらウナギを追いかけた。自分たちがやっている科学的意味には自信があったが、こんな効率悪いことをやっていていいのかとの思いはあった」

 その時、「それは自分たちが受け入れればよいことだ」と気づく。「ドン・キホーテでいいのだ。うなぎ研究界のドン・キホーテ、『うなドン』になろう、と」

 青山さんは、知的好奇心が満たされたときの感動を「脳みそグワングワン」と、人間が感じる根源的な感動を「魂グワングワン」と名づける。

 「人間的な感動は論文にならないが、まちがいなく科学の魅力の一つ。研究者の業績が論文だけではかられる傾向にあるが、論文の前には『魂グワングワン』があることを知ってほしい」と話している。(都築和人)

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