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木造モダニズムの魅力

2011年5月28日10時24分

写真:川に突き出たベランダが印象的な日土小の外観拡大川に突き出たベランダが印象的な日土小の外観

 鉄とガラスとコンクリートによる伸びやかな空間と機能性。そんなモダニズム(近代主義)建築を、日本の建築界は木造で造ってきた。なかでも評価の高い一つが、愛媛県八幡浜市の日土(ひづち)小学校だ。2009年に保存再生工事が終わり、その成果が6月3日まで、東京都江東区新砂の竹中工務店東京本店内のギャラリーA4で紹介されている(土日休み)。

 大きな横長の窓が続く壁面、ゆったりとした階段、裏の川に向かって突き出したベランダ。みかん畑に囲まれた日土小は、地方にあってモダニズムの魅力にあふれている。でもそこに、切り妻屋根が載る。

 さらに、廊下と教室を分けて、教室の両側から光を採り入れるための驚きに満ちた工夫もあり、今も子供たちを見守る。

 設計は同市職員だった松村正恒(1913〜93)。56年に中校舎、58年に両面採光の東校舎が完成した。

 関連シンポジウムで、松村建築の論考を本にまとめた花田佳明・神戸芸術工科大教授は「戦後の民主的教育を空間化」「現代の学校としても通用する」と評価した。

 99年には国際組織が日本のモダニズム建築の20選に選定。評価の高さから、すんなり保存されたのかと思いきや、シンポではいかに危機的だったかが語られた。

 04年に台風の被害にあい、05年ごろには建て替えによる「安心安全」を求める声が高まる。関係者の努力に加え、流れを変えた一つが、市教委設置の委員会による提案だったという。

 耐震補強をした上で、東校舎は保存、中校舎は増築を含めた改修。さらに新西校舎を建設した。「元の姿のままの保存」にこだわり過ぎない現実的な柔軟さが、功を奏した形だ。

 花田さんは「複数の時間を持つ校舎が並ぶ姿は、松村さんが求めた社会への夢とも重なる」と語る。

 いま八幡浜市は、日土小学校が国の重要文化財となることを目指している。(編集委員・大西若人)

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