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2011年9月21日11時29分
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「チャイルド44」作者来日 国家の虚構と崩壊描く(1/2ページ)

 ソ連体制下の連続猟奇殺人事件を描いた『チャイルド44』の著者、英国人のトム・ロブ・スミスが来日した。『グラーグ57』、そして最新作『エージェント6』へと続く3部作(いずれも新潮文庫)は、サスペンス小説の魅惑を備えながら、国の崩壊と歩みを重ねる主人公の一代記へと広がっている。

 「このミステリーがすごい!」2009年版の海外作品1位に選ばれた『チャイルド44』は、実際の殺人事件をモデルにした。1970〜90年ごろ、ソ連で女性や子どもを50人以上殺害した殺人犯、アンドレイ・チカチーロの事件だ。

 だがスミスは、「事件そのものより、社会の反応に興味があった」と言う。

 共産主義社会は犯罪が減少する――。国家がその「イデオロギー」を守ることを優先したため、チカチーロ事件は解決が遅れたと考えた。「国がプロパガンダという『物語』を作り出す状況を、追いたかった」

 だから舞台は、共産主義イデオロギーが鮮明に現れたスターリン時代、50年代に変えた。主人公レオ・デミドフは、国家の作った物語をかたくなに信じ、政治犯を摘発する秘密警察の一員との設定にした。

 レオはある事件の捜査を契機に、国家の物語に疑いを持ち始める。何が事実で、誰が味方なのか。先の見えない緊迫状態を描いた。「当時、虚構を信じこませるため、国家は芸術を用いた。だから芸術を用いて、その時代の真実と幻想の相克を描きたかった」

 1作目を大団円で閉じた時、新たな問いが浮かんだ。「まだレオは話を持っているのではないか?」。その答えが贖罪(しょくざい)だった。「弾圧して収容所に送った無辜(むこ)の民の恨みは、レオが善行を積むことで解消されるのだろうか」と考えた。

 続編『グラーグ57』は、レオが強制収容所に送った司祭とその妻の復讐(ふくしゅう)が軸に据えられる。信条を転換したレオは、自らの過去に向き合う。

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