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2011年10月19日12時2分
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6・11脱原発デモ、48%が初参加 ネット・口コミ7割

写真:都留文科大准教授 平林祐子拡大都留文科大准教授 平林祐子

 3・11以降、脱原発を求める運動は全く新しい局面に入っている。脱原発関係のイベントは4月3日から9月末までの間に、全国で1195件。そのうち216件はデモだ(ウェブサイト「脱原発系イベントカレンダー」より)。4月10日の高円寺デモに1万5千人、6月11日は全国で合わせて7万9千人、そして9月19日の明治公園に6万人。 デモで歩いているのは誰なのか。半世紀近くも「少数派」であり続けた、今までの反原発運動と何が違うのか。デモは本当に「推進派にとっては痛くもかゆくもない」ものなのか。

 3・11から3カ月後の6・11、6カ月後の9・11に東京都心で行われた複数の大規模デモ(パレード)の参加者を対象に調査を行った(両日とも、3カ所のデモ前の集会における面接調査。回収数は6月は467、9月は449)。三つの特徴を挙げよう。

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 第一に、デモ参加者の多くは、これまで運動に参加したことがなかった人びとである。デモ参加は初めてという人が、6・11には実に48%、9月でも35%を占めた。初参加者は4割から5割が30代以下とデモ経験者に比べて若い。

 第二に、利用されているメディアがまさに今日的である。デモを知った情報源のトップ3は、インターネット、ツイッター、知人からの口コミで、これらで約7割を占め、チラシや新聞・TV等の伝統的メディアは合わせてわずか5%程度にとどまる。

 第三に、3・11以降の脱原発運動は社会の多様な層に広がっている。6月、9月とも、都内の三つのデモ(パレード)について調査したが、参加者の性別や年齢層、運動参加経験等は互いに大きく異なった。既存の反原発運動が動員力を発揮するいっぽう、新しい人々がそれぞれの個性を活(い)かして街頭行動を展開している。

 新たな参加者がデモの主催までやれてしまう背景には、いくつかの要因がある。2000年代の反貧困、イラク反戦等の運動の積み上げ。デモの音楽やラップ、持ち物、衣装、ウェブサイトまで「表現としてのデモ」という運動文化の浸透。原発批判派の専門家たちを擁するNPO・NGOの定着などだ。

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 これらすべてを支えているのが、新しいメディアの発達である。ネットを介した情報流通の速さと容易さが、既存組織なしで数百人から数万人の参加者を集めることを可能にした。そして、デモの中継、ツイッターやブログでの発信など、マスメディアに代わって自分たちがメディアの役割を担う「メディア・アクティビズム」が、運動の非常に重要な一部になっている。

 90年代頃(ごろ)から、脱原発運動の目標や役割は政策策定の実務への実質的参加に一定程度シフトした。しかしいまの街頭行動はそれとは違う。3・11が、どういう社会を選ぶのか、という最も根幹的な問いを改めて私たちに突きつけたからだ。今回だけは自分でその問いに答えたいと考えた人々の、最新の技術や文化に支えられた楽しくも真摯(しんし)な意思表明。それが「原発いらない」の一点に絞った街頭行動である。

 7カ月経ったいま、本当の社会的選択を行う回路と感性をこの社会が持てるかどうかが問われている。(都留文科大准教授〈社会学〉)

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 ひらばやし・ゆうこ 1964年東京都生まれ。東京都立大大学院社会科学専攻科博士課程単位取得退学。富士常葉大助教授を経て2006年から現職。

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