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2011年12月23日11時3分
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圧倒的な現実を前に〈回顧2011・文学〉(1/3ページ)

:芥川賞を受賞した西村賢太(左)と朝吹真理子拡大芥川賞を受賞した西村賢太(左)と朝吹真理子

■震災に即応 「すべて」あぶり出す

 圧倒的な現実を前にした時、フィクションに何が出来るのか――作家らは常に問うてきた。阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、米国の同時多発テロ、そして東日本大震災。

 米国の評論家で作家の故スーザン・ソンタグは9・11から約半年後「物事の複雑な様相を示すのが作家の仕事だし、作家にはその責任がある」と語った。

 それと両立するのだが、高橋源一郎は「小説の機能のひとつとして即応性がある」と「SIGHT」誌の斎藤美奈子との対談で述べている。高橋は早くから震災をふまえた作品を発表し続け、震災支援AVを企画する男の物語『恋する原発』(講談社)を刊行した。

 川上弘美は5月初旬発売の「群像」に「神様 2011」を発表した。クマとの散歩という筋はデビュー作「神様」と同じだが「2011」では、防護服やガイガーカウンターが普通に存在。世界が決定的に変化したと気付かされた。『神様 2011』(講談社)にこの2編を収める。

 福島県出身の古川日出男は地震から1カ月たたない被災地に入り『馬たちよ、それでも光は無垢(むく)で』(新潮社)を書いた。自作『聖家族』を下敷きに、時間や日付の感覚がなくなる平常心の喪失が吐露される。

 逆に、年月を経て現れる物語もある。2001年9月1日、東京の新宿・歌舞伎町の雑居ビルで火災があり44人が死亡した。宮沢章夫『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』(新潮社)は、その実行犯かもしれない男の9・11当日までを描いた。事件は次々と起こり忘れられるが、不安と閉塞(へいそく)感はずっと続いていたのだ。

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