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2012年2月4日10時56分
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サラリーマン 憂き世忘れる コレクション

写真:小野忠重「隅田川ノ橋(駒形橋)」(1933年ごろ、木版画)拡大小野忠重「隅田川ノ橋(駒形橋)」(1933年ごろ、木版画)

写真:小林清親「九段坂五月夜」(1880年、錦絵)拡大小林清親「九段坂五月夜」(1880年、錦絵)

■昭和初期の収集家・森井荷十展

 「儲(もう)けたは会社なりけり大晦日(おおみそか)」。現代のサラリーマンが心情を吐露したかのような川柳だが、作者は森井荷十(かじゅう)(本名・森井嘉十郎、1885〜1948)。明治末期から昭和前期に、倉庫会社に勤務しながら活動した川柳作家で、美術愛好家でもあった。そのコレクションが東京・練馬区立美術館で公開されている。

 「金溜(た)める男の話寂しう聞きぬ」。荷十にはこんな句もある。重役にまで昇進したが、仕事だけでは満たされなかったのだろう。35年前後の数年間に集中的に購入したコレクションは約300点を数える。

 「また今朝も新聞が来てゐる悲し」。自己の内面を見つめる句を残した荷十は川柳の近代化を担った作家の一人。同時代の美術の動向にも関心を寄せた。なかでも東京の都市景観を刻んだ、小野忠重ら新版画集団の作品は制作から時期を置かずに購入。その一方で、江戸の情緒と明治の文明開化が交錯する小林清親らの錦絵も収集している。

 「常にほしき幕明き時の心もち」。荷十が美術品を収集したのは米国の大恐慌に端を発した不況期。嘆息しつつも自らを叱咤(しった)して仕事に励み、その傍ら川柳に精進し美術に心を遊ばせた姿に、現在のサラリーマンも共感を覚えるのではないか。(西岡一正)

    ◇

 14日まで、月曜休館。

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