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2012年2月10日10時19分
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〈甲乙閑話〉将棋ソフトと作る新たな局面

 将棋の米長邦雄元名人が、コンピューターの最強ソフト「ボンクラーズ」に敗れた。結果と共に注目されたのが、元名人が2手目から見せた常識外れの手順だった。

 ボンクラーズはプロなどの棋譜を下敷きに形勢を判断し、指し手を決める。米長元名人は事前にその特徴を研究し、過去の実戦例が役に立ちづらい戦いに持ち込むのが得策と考えた。徹底的に「勝ち」にこだわった末の秘策だった。

 だが、相手の攻めの完封を狙うこの作戦は、自ら攻める狙いに乏しく、やや消極的と言えた。実際、序盤は元名人のペースで進んだが、中盤でミスをとがめられ、以下はあっけなく押し切られた。一方、ソフトは、人間でも選びそうな自然な指し手が目立った。

 将棋の真の強さは、前例のない局面でこそ試される。柔軟な発想で自らの優位を築く手順を鮮やかに導き出すところにだいご味があり、見る者はそうしたきらめきに対して喝采する。

 ソフトは、読む手の数は人間をはるかに上回るが、構想力ではまだトッププロに及ばないと考えられてきた。自ら「実験台」となった元名人の勇気には敬意を表するが、今回の勝負では、ソフトの「構想力」がどれぐらいのレベルに達したのかはわからなかった。

 来年は、五つの将棋ソフトとプロ5人が対決する。勝敗に注目が集まるのは当然だが、将棋そのものの進歩につながる魅力的な棋譜の誕生を期待したい。(村瀬信也)

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