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2012年2月24日10時46分
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震災後 詩を信じる、疑う 吉増剛造と谷川俊太郎(1/2ページ)

写真:吉増剛造さん=竹谷俊之撮影拡大吉増剛造さん=竹谷俊之撮影

写真:谷川俊太郎さん=安冨良弘撮影拡大谷川俊太郎さん=安冨良弘撮影

 東日本大震災は、言葉のみで作られる詩の世界の地軸をも強く揺さぶった。詩人たちは、震災後の世界とどう対峙(たいじ)し、自らの仕事や役割をどう位置づけているのか。日本の現代詩を代表する吉増剛造と谷川俊太郎にいま「詩とは何か」を聞いた。

■吉増剛造 言葉を粉々に砕き、別の声を出す

 昨年、岩手県陸前高田市を訪ねました。コンビニ店の青い看板、畳、年賀状が落ちている。ブルドーザーが大きな手でがれきを掻(か)き出していた。その時、それらは名付け得ぬものであり、撮影したり表現したりしてはいけないもの。ただ頭をさげなくてはいけない。そんな声が聞こえてきた。

 普通に通用している言語では表現できないような深いことを経験されたから、つらくて口をつぐんでいる方は多い。テレビの映像や学者先生の言説を経由しては届いてこない声がある。

 アイルランドの詩人イエーツは「詩作という行為の責任は夢の中で始まる」といった。津波に襲われて生還した学生の話を聞いたとき、僕も、責任を持って、長い時間をかけて、若い学生の声に夢の中でさわっていこうと思った。学生の部屋のちゃぶ台が学生に「一緒に逃げろ」とささやくさまが目に見える気がした。

 ポール・ヴァレリーは詩を「音と意味のあいだでの逡巡(しゅんじゅん)」と名づけた。底深いところに音の精霊が潜んでいる。毎回、異なる光が寄せてくる。きらきらした甘い香りがすることもあるし、突然の不意打ちもある。精霊の細い声を僕が音にして、その音のそばに出てくる新しい意味を追いかけ、音と意味とを交錯させる。

 そこにたどりつくまでに、絶望的な荒涼たる風景を何度もみて、地下世界を巡らないといけない。自分の言葉を粉々に打ち砕き、全く別の声を出す。難解といわれようと詩がやらないといけない仕事なんです。

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