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2012年3月30日10時29分
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証明不能な世界指摘 福島原発「指さし作業員」の個展

写真:竹内公太展「公然の秘密」の会場。指さし作業員の映像の前の椅子に座ると、竹内と糸電話で話すことができる 拡大竹内公太展「公然の秘密」の会場。指さし作業員の映像の前の椅子に座ると、竹内と糸電話で話すことができる

 東京電力福島第一原発の事故後に生まれた表現の中でも話題を呼んだ一つが、「指さし作業員」。原発敷地内の固定カメラの前に防護服姿の作業員が現れ、カメラを指さす。この“パフォーマンス”の関係者とされる美術家の個展が今、東京都内で開かれている。

 美術家は1982年生まれで、東京芸術大先端芸術表現科で学んだ竹内公太。第一原発の作業員を務め、作業環境をブログに記したり東京電力の会見で質問をしたりしてきた。

 一方、匿名の指さし作業員も彼自身のブログで、指さした対象は東電や政府、動画を配信などで見る人や自分自身と記し、米国の美術家V・アコンチのパフォーマンスを参照したことや、「観察」に「指さす」という反対方向を与えたかったことも明かしている。

 個展会場では、指さし映像が大きく投影され、あとは作業所での暮らしを伝えるスナップ写真などが意外に淡々と展示されている。

 パフォーマンスのために毎日会場にいる竹内に「指さし作業員はあなたか」と問うと、「僕は僕だと思っている。でも、それを客観的に証明することができない」という答え。事故や東電を指さすだけでなく、メディアを通じて分かったつもりでいても、本当に本当かは分からない、と指摘しているのだ。

 実は竹内との会話は、糸電話を通じてのものだ。彼は会場外のブースに座り、そこからの糸が会場へと続く。これが今回のパフォーマンス。竹内と聞かされ会話をしても顔は見えず、ここでも証明は不能だ。

 ブースは原発やパソコン、テレビ、ネットカフェを、糸電話はネットや電波を連想させる。そして両者で、今の世を暗示する。(編集委員・大西若人)

 ◆4月1日まで、世田谷区弦巻2の30の20のXYZ collective。

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