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2012年4月21日10時39分
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〈自作再見〉横尾忠則「よだれ」

写真:1966年、キャンバスにアクリル絵の具、53センチ×45.5センチ、徳島県立近代美術館蔵拡大1966年、キャンバスにアクリル絵の具、53センチ×45.5センチ、徳島県立近代美術館蔵

写真:横尾忠則さん拡大横尾忠則さん

■少年時代の回想、創造の源泉

 女性の肖像画には男性の性的欲求を反映したものが多いのでしょうが、この絵では、ごく自然に、少年が大人の女性に抱く憧れや畏怖(いふ)を描いてしまいました。

 1966年に画廊から、絵画展をやらないかと声をかけられ描いたものです。当時はグラフィックデザインの仕事が中心でしたが、もともと画家になりたかった。1カ月ほどで約20枚、ピンクの肌をした女性ばかりを描きました。

 女性の内側を知りたくて、肌を、仮面を1枚はがして描くとピンクじゃないかな、と。後に「ピンクガール」と呼ばれます。これは最初の方に描きました。

 女性は「血とバラ」という映画に出てきた女吸血鬼を参考にしました。ただ吸血鬼のままだとイメージが固定される。挑発的な女性像として、歯はガタガタ、まつげパッチリ。こんな肖像画はなかったと思います。そして血のかわりに、よだれを流しています。

 逆に背景は、ルネサンスの肖像画風に。南仏のニースで買った絵はがきを元にしています。ミック・ジャガーがコンサートのポスターに使いたいと言ってきたこともあるんですよ。

 個展の時は、メディアにはほとんど取りあげられなかった。半ば忘れられていたのですが、まず海外で注目を集め、2002年以後に、行方不明になったものを再制作したり、このシリーズで新作の依頼が来たりで、今では60点ほどになっていると思います。

 何度も描き直すのは、ウォーホルのような反復に興味があるからです。背景や設定を変えて描き直すとその都度、発見がある。お堀を泳ぐピンクガールもいるのですが、東日本大震災後のチャリティー向けには海を泳ぐ女性にしました。海を鎮めたい、という思いがあったのかもしれません。

 今でも、インスピレーションの原点は10代のころ。少年時代を回想、夢想することが創造の源泉です。再制作した「よだれ」は最大で100号。一度もっと大きく描いてみたいですね。(聞き手・大西若人)

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