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2012年6月8日10時6分
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「お国ことば」にこだわり 宮坂静生、俳句協会長に

写真:現代俳句協会長に就任した宮坂静生さん。松本市内の自宅書庫で拡大現代俳句協会長に就任した宮坂静生さん。松本市内の自宅書庫で

 新しい現代俳句協会長に、「地貌(ちぼう)季語」を提唱する宮坂静生(74)が就任した。俳句に欠かせない季語に「お国ことば」を取り入れ、地域を生き生きとさせることを目標に掲げる。

 土地の生活や歴史を感じさせる言葉を「地貌季語」と呼ぶ。「その土地で愛され続けた言葉を使うことで風土の誇りが生まれる」

 例えば、沖縄の「風車祝(カジマヤー)」を詠んだ「生きぬいて生かされて母風車祝」(大城富子)。旧暦9月7日に数え97歳の老人に風車を持たせて墓地まで歩く。死んでまた生まれ返る意味だという。生死が混然とした縄文時代の意識が伝わる。

 「熱燗(あつかん)に酔ふて太声(ふとごえ)地獄入り」(新田祐久)の「地獄入り」は加賀の言葉で、種まきをした夜の宴会。その後の猛烈な忙しさに備えて前祝いをした。大分県国東半島の火祭り「ケベス祭」を詠んだ「ケベス舞う火に惚(ほ)れられてふくら脛(はぎ)」(河野輝暉)など、これまで採集した季語は350以上で、いま記録しないと消滅する可能性もある。

 標準語化された季語体系には疑問を抱く。同じ雪でも、雪深い信州で暮らした一茶と、江戸の芭蕉の見方は違う、という。

 長野県松本市生まれ。中学2年で俳句と出会った。信州大で近世文学を専攻、同世代の樺美智子の死は衝撃だった。高校教師だった20代半ば、満州開拓団が帰国後に住んだ軽井沢近くの開拓地に通う。移民の半分、約400人が亡くなったと知り、地元の歴史の重さに打ちのめされた。人の死と生を考えることがテーマになった。

 そんな中、前田普羅の句集を知る。普羅は関東大震災後に富山に移住、多くの山岳俳句を残したが、「自然と称して同一視できない」と、浅間山、飛騨、能登と別々の句集にした。各地の個性を「地貌」と呼んで愛した普羅に感動し、その言葉を継承した。

 1978年に松本で主宰誌「岳」創刊。母校の医学部では30年以上、芭蕉や一茶、子規を題材に死と文学を教えた。「医にたずさわる者は、死を意識しないと患者に向き合えない」と確信している。(宇佐美貴子)

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