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2012年6月8日10時7分
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生誕130年、茂吉と向き合う 時代や手法に注目(1/2ページ)

写真:岡井隆さん=麻生健撮影拡大岡井隆さん=麻生健撮影

 今年は近代短歌の巨星・斎藤茂吉の生誕130年。時代を超えて読み継がれ、現代短歌に影響を与えてきた仕事に、改めて向き合う試みが相次いでいる。

■時代読み解く岡井隆

 茂吉研究で知られる歌人の岡井隆(84)が『今から読む斎藤茂吉』(砂子屋書房)を出した。日中戦争が始まった1930年代を中心に、茂吉が作った短歌や随筆を読み直したエッセーのような論考だ。

 戦争勃発に「おびただしき軍馬上陸のさまを見て私の熱き涙せきあへず」と興奮し、多くの戦意高揚の歌を作り続けた茂吉は、敗戦で文学者としての戦争責任を問われる。

 だが、岡井は、茂吉のこんな文章などに目をとめる。「戦争がはじまると、歌人は勇奮感激して歌を作り、また放送局でも雑誌でも新聞でも競うて戦争の歌を徴求し、ここに於て歌も武装せざることを得なかつた」

 岡井は3・11後の「がんばろう日本」や反原発の合唱に、戦中と似た圧力を感じ、「原発はむしろ被害者、ではないか小さな声で弁護してみた」という歌を作った。「でも、戦争となったらどうだろうか」と考える。

 そして、占領下に短歌そのものを批判する「短歌滅亡論」の嵐に見舞われ、「短歌ほろべ短歌ほろべといふ声す明治末期のごとくひびきて」とうたった晩年の茂吉の悲しみが、「自身が老いてやっと身にしみて感じられる」という。

 「戦争も、大震災も、歴史的事件に際して取った行動が正しかったかどうか、結果が出るのは何十年も先だ。その時は惑いに惑ってある方向に行く」。それを体験していない世代に伝えるのは難しい。

 「今の短歌に、ある政治状況で詩はなにを言うことができるかという問題意識は薄い。それでも時代ってこんな風に動くんだよ、とあの時代の空気を知っているものが伝えないといけないんだろう」と語った。

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