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2012年6月8日10時10分
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被災文化財を救う活動広がる 標本や子どもの文集まで

 東日本大震災で被災した文化財を救う「文化財レスキュー」が、文化庁や全国の研究機関によって続いている。考古・歴史系資料だけでなく、役所の行政文書や動物標本など「文化財未満」のものも同等に救おうという、かつてない取り組みだ。

 国立文化財機構や人間文化研究機構などが「被災文化財等救援委員会」を昨年4月に結成。被災地に専門職員を派遣した。津波に破壊された宮城県石巻市の石巻文化センターや岩手県の陸前高田市立博物館などで、水損資料をがれきから掘り出して選別。乾燥が必要なものは奈良市の奈良文化財研究所などに送り、真空凍結乾燥処置をした。

 対象には昆虫・動物や魚介の標本、行政機関が保管する事務文書、子どもの文集なども含まれる。国立国会図書館が担当した岩手県の野田村立図書館では、津波を受けた2万点の書籍から婦人会の文集など郷土史料220冊を選び、保存処理した。「一般図書は再入手可能だが、村の史料が失われると地域の現代史がわからなくなる」(国会図書館・中島尚子さん)からだ。

 被災した国指定文化財は754件だが、未指定資料の総数は計り知れない。宮城県では2003年夏の大地震以降、東北大などが「宮城歴史資料保全ネットワーク」を組織し、県内資料の所在調査を続けてきた。それでも「震災後に救出した2万点は多くが新発見のものだった」(平川新・東北大教授)。被災地の外でも、資料の内容と所蔵場所の把握とデータベース化が急がれている。

 レスキューは今も続き、津波被害の大きかった沿岸部から内陸部へ、損壊した個人所有の土蔵に残る民俗資料などの救出へと、重点が移りつつある。しかし、福島県内の原発事故警戒区域内にあり、放射性物質を含む雨水が浸入した建物などにはまだ手が出せない。

 仕組みに課題も残る。現在、レスキューは都道府県教委の支援要請があって初めて救援委員会ができる。また、文化財建物の復旧を支援するため文化庁や日本建築士会連合会などが進める「文化財ドクター」事業との連携も密ではない。東京文化財研究所の岡田健・保存修復科学センター長は「被災地に急行する医師らの災害派遣医療チーム(DMAT)のように、地域ごとに関係団体のネットワークが判断して動かせるチームが文化財の世界にも必要だ」と話している。(編集委員・小滝ちひろ)

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