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2012年6月15日10時24分
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「震災が導いてくれた」 3人に詩歌文学館賞

写真:左から須藤洋平さん、佐藤通雅さん、宇多喜代子さん=5月26日午後3時40分、岩手県北上市・詩歌文学館拡大左から須藤洋平さん、佐藤通雅さん、宇多喜代子さん=5月26日午後3時40分、岩手県北上市・詩歌文学館

 第27回詩歌文学館賞の贈呈式が先月末、岩手県北上市であった。詩集『あなたが最期の最期まで生きようと、むき出しで立ち向かったから』(河出書房新社)の須藤洋平(34)、歌集『強霜(こはじも)』(砂子屋書房)の佐藤通雅(69)、句集『記憶』(角川学芸出版)の宇多喜代子(76)がそれぞれあいさつした。

 須藤は東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県南三陸町在住。周囲が復興に向かう中、神経の病気トゥレット症候群と闘う詩人は作業に加われず、自分こそ震災で死ぬべきだったと苦しみぬいた。ぎりぎりの精神状態で書いた20編が選考委員の目にとまった。

 「(震災により)無残に逝った叔父が、強引に骨つぼに押し込まれた時のあの、乾いたきしんだ音を聞いた時、立たなければと思いました。ちっぽけな僕に何ができるのか。逝った人たちが浮かばれるかどうかは、これからの僕の生き方に関わってくるだろう。生きる方へ、書き続ける方へと導いてくれた」と感謝を述べた。

 佐藤は岩手県生まれ、仙台市在住の元高校教師。1966年創刊の個人誌「路上」を活動の場とし、昨年には120号を出した。短歌のみならず、教育問題や児童文学、宮沢賢治研究など関心は広い。

 「華やかなことが苦手だから個人誌だった。結社に属さない自分が、全国的な賞を受賞できたのは奇跡」

 2005〜10年の作品を収録した受賞作を編集作業中に震災が起きた。あふれるように歌が湧いたが、時流に乗るのが嫌で収録をやめた。震災歌集として改めて出版するという。

 宇多は前現代俳句協会長。「厳格な自選を経た句集」と評価された。受賞作には沖縄の戦跡を詠んだ句も収録した。「先の戦争のことが、今頃になって初めて句になった。百年前、千年前の記憶も私の中に組み込まれ、私の記憶として残る。俳句を作ることは記憶の再生になる」と書名の由来を語った。(宇佐美貴子)

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