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2012年6月22日10時29分
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滅びの感覚に内包される光 中原中也賞受賞の暁方ミセイさん

写真:詩人の暁方ミセイさん拡大詩人の暁方ミセイさん

 人のおとせぬあかつきにほのかに夢にみえたまふ、未生(みしょう)の言葉をすくいとる。ペンネームに即していえば、こんな詩風だろうか。初めての詩集『ウイルスちゃん』(思潮社)で中原中也賞を受けた。

 収められた20編から「世界葬」の第1連を。〈しずかに 雪が降ってくる/ゆっくりと/光りながら(あるものは円を描き/(またあるものは溶けて消え/雪が降ってくる/そとはなにもきこえない/わかるのは/わたしいま 脈打っているということ〉

 雪の情景が滅びゆく世界の姿としてとらえられ、透明感のある言葉と温かみのある身体感覚でうたわれる。

 幼いころに亡くなり、工場の跡地に埋められた幻の妹が、木の芽時になると姉を慕ってよみがえる「丘の造船工場」も、心に残る。

 暁方の詩は、死や滅びの感覚を内包しながらも、明るい。選考委員の詩人北川透は「死といっても闇ではなく光を媒介とした死であり、東日本大震災後の最初の受賞作にふさわしい」と評した。

 『ウイルスちゃん』という題名には編集者が首をかしげたが、押しきったそうだ。

 「小学校や中学校では、なかなかクラスに溶けこめない少女でした。人から隔てられているという感覚から私の詩は生まれました。ウイルスも人から隔たった存在だけれど、不思議な愛情を感じまして、ちゃんづけにしたのです」

 大学2年のときから「現代詩手帖(てちょう)」に投稿し、現代詩手帖賞に。昨春卒業して、今は社会人。幼いころ、理科教師の父と一緒に山や森をよく歩いた。自分の正体は山の子、獣の子と思ったことさえある。自然や宇宙と交感する感覚は詩集全体をつらぬいている。

 中也賞の贈呈式では、「この詩集にとらわれず、変貌(へんぼう)しながら詩を書いてゆきたい」と抱負を語った。(白石明彦)

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