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2012年6月22日10時30分
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「死」を考えるきっかけに 安田依央「終活ファッションショー」

写真:『終活ファッションショー』を刊行した安田依央拡大『終活ファッションショー』を刊行した安田依央

 いのちの終わりに備える人々を描いた『終活ファッションショー』(集英社)が刊行された。執筆した作家の安田依央は「死について考えることは生きることについて考えること。小説を通して、死を自分のこととして考えてほしい」と話す。

 主人公の市絵は司法書士。近所の老人たちの遺言相談にのるうちに、「ひつぎに入る時に着たい服」を発表する「終活ファッションショー」を企画する。ショーの準備を通して、集まったさまざまな参加者たちの人生が垣間見えてくる。

 安田も現役の司法書士で、NPO「生と死を考え、将来設計を実現する会」を主宰する。仕事やNPOの活動を通して、遺言や相続をめぐって傷つけ合う人たちを目の当たりにしてきた。遺言書に葬儀の希望を書き残していても、周囲の目に触れるのは肝心の葬儀が終わった後という人たちを「あぁ、またや」と思うほど、目にしてきた。その一因は、死を語ることがタブーとされている現状にあると考えている。「死ぬ瞬間を見ることもなく、死の実態が見えていないため、死への意識がなくなった。多くの人が死を我が身のこととして考えていないような気がする」

 「終活ファッションショー」は2010年7月、自身が開いたイベントだ。同じ年、『たぶらかし』(集英社)で小説すばる新人賞を受賞。すぐに、本作を書き始めたが、主人公と自分の姿に重なる部分が多く、「距離感がうまくつかめず、難航を極めた」という。祖母が亡くなった直後には、東日本大震災が発生。「自分が生死の問題を軽々しく扱っていないか」と自問自答の日々が続いた。「私なりに真っ正面から、このテーマに取り組んでいると思えたので、完成させることができた」と話す。

 小説では「終活」という概念を丁寧に説明しながら、読み物として面白いと思えるように工夫したという。実用書ではなく、小説という形にしたのは幅広い世代に手に取ってもらえると考えたから。

 「死を考えることは限られた時間を有意義に生きることにつながる。死はあまり関係ないと思いがちな若い世代にも、考えるきっかけにしてほしい」(山田優)

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