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2012年6月22日10時30分
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松丸本舗の「文脈棚」監修・松岡正剛に聞く「書店のこれから」

写真:松岡正剛さん=倉田貴志撮影拡大松岡正剛さん=倉田貴志撮影

グラフ:全国の書店数の推移拡大全国の書店数の推移

 ネット書店に対抗しようと、街の本屋さんは頭をひねっている。答えのひとつが「文脈棚」。本を著者別や分野別でなく「意味」でつなげて棚に並べる。この手法で実績をあげているのが東京駅そばの丸善丸の内本店4階にある「松丸本舗」。監修する松岡正剛・編集工学研究所長に、書店のこれからについて聞いた。

■ネット対抗策、奏功

 ――「松丸本舗」の本棚はぐるぐると渦巻くように並んでいます。本の並びも、たとえば、岩波文庫の『ブッダのことば』から、マンガの『テルマエ・ロマエ』、文庫クセジュの『古代ローマの日常生活』と続き、ホメロス『オデュッセイア』からダンテ『神曲』へ、となっています。その結果、過去2年間の人気の著者は、1位がダンテ、2位は白川静、3位に寺田寅彦。4位が萩尾望都、5位に岡潔と、ほかでは見ないランキングになりました。

 お客さんはちゃんと呼応してくれているんだと思いました。多くの書店はベストセラーを大量に並べ、読者もランキングの上位から買う。本だけの現象ではなく、日本の知の遊びが平均化した一つのものに向かっている。大きな問題が背景にあると思う。

 松丸本舗の棚は、思い切って迷宮のようにしようとねらった。本の目次で1冊のアウトラインが見えるように、松丸の本棚は、本の並びが、めくるめく読書の世界のガイドラインになっている。並び替えれば、本はどんな風にも変化する。1冊の本を読むことも大事だけれど、隣りあう3冊を並べて見てほしい。

 ――本棚に魅せられた原点は、雑誌「遊」を刊行し始めた1970年代、武田泰淳に見せてもらった書庫だったそうですね。

 本棚を見せていただけないか、とおずおずとお願いすると、いいよ、と。先生は「本は天体ショーみたいなもの」と話していました。火星が大接近していた頃で、同じように並んでいても、火星のように近づいてくる本があれば、星雲のようなものもある。季節ごとに違う花が咲くのにも似ていて、かつてしおれていた本が今になって咲いたりする。するとその本の場所をちょっと移すんだ、と。

 本の文脈は、人によって、作家や書店員によってある。彼らの作り上げる本棚は読書以上に参考になるかもしれない。本棚を見ることは読書の入り口です。

 ――書店は毎年、減り続けています。書店の活路はどこにあるのでしょう。

 八百屋やレストランと比べれば書店は客に対応しない歴史が長かった。「いらっしゃいませ」も言わない。「こんなジャケットがほしい」と自分に合うものを見つけたくて店に来るのは書店も同じなのに。本だとなぜ、冷たい空間になるのだろう。

 本はひとりで静かに読むものという考えをやめたらいい。僕は本を持ち寄るブックパーティーを開いた。本の音楽会や、本の茶会、本のファッションショーも計画している。読者がつくる本屋、本の屋台村なんてどうだろう。本はまだまだ試されていない。

 深夜に開いている本屋ももっと必要だと思う。夕方5時ではだめだなあ。お行儀のいいものになってしまっているが、本も欲望の世界。夜が深まり、欲望がただれていく中で書店に行き、本を選んだらおもしろいと思うよ。

 気分によって、季節によって、自由に本を選び、読書につなげたら、本はおもしろくなる。きっと本屋に行くことも楽しくなると思う。(聞き手・中村真理子)

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