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2012年6月29日10時54分
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「あのずば抜けた新人」再び 文学界新人賞の小祝百々子

写真:小祝百々子さん拡大小祝百々子さん

 千を超える応募作の中から一つの才能と出合うことは偶然か必然か。第114回文学界新人賞はその両者を感じさせる結果だった。

 受賞作は小祝百々子(こいわい・ももこ)(32)の「こどもの指につつかれる」。贈呈式で選考委員の花村萬月は「一読してこの人だと思った。新人離れしていた」と評した。そして「裏話を打ち明けると」と10年ほど前の話を始めた。

 中高生の少女向け小説のコバルト短編小説新人賞で花村が選考をしていた時、「ずば抜けてすばらしい」新人を見つけた。だが、「レベルが高すぎて中高生向けでは厳しいのではないか」とも感じたという。編集者に見せると反応は良くても本にしてくれない。1作は出たが、そのまま、時がすぎた。

 「今年の年賀状では短歌を始めたと書いてあったから、もう小説はやめてしまったのかと思っていた」。選考後に受賞者のプロフィルを見ると本名に見覚えがあった。あのコバルトのずば抜けた新人だった。花村は2回繰り返した。「正直、驚きました」

 小祝がコバルトに応募したのは24、25歳の頃。受賞後、書いては没にされる、を繰り返す一方で、自分の好きなことを毎日書き続けていたという。ペンネームを変えて、文学界新人賞に応募した。

 受賞作は、初老の男がつましく暮らすアパートの部屋に、生意気な小学生の男の子がやってくる。語り手は男ではなく、事故で失われた男の片腕。「腕の性格を重視して」と、文体はですます調だ。男に片腕がないこと、片腕が語り手であることはすぐにはわからない。幻の片腕の視点から、男や少年たちを静かに見つめる。

 ストーリーやキャラクターの面白さで書いてゆくコバルト時代と、小説の書き方は変わった。「一文一文を丁寧に書いていきたい。どのページをめくっても味わえるような、おいしい文章が好きなので。いろいろなものにチャレンジしていきたい」(中村真理子)

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