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岩波書店の小冊子シリーズ「岩波ブックレット」が創刊30年を迎えた。「はじめの一歩 はじめの一冊」とうたい、刊行点数は900近くになる。
1982年4月、岩波ブックレットは「紙つぶて」をつくる、として始まった。表紙はどれも岩波書店のマーク「種まく人」。背表紙にタイトル表記はなく「岩波ブックレット1」とあるだけだ。書店で棚に並べてもらうことまで想定していなかったようだ。
初期に刊行され長く読み継がれているものに中沢啓治著『はだしのゲンはピカドンを忘れない』、『荒れ野の40年 ヴァイツゼッカー大統領ドイツ終戦40周年記念演説』、山田洋次著『寅さんの教育論』などがある。「反核・平和」や「教育」は今も柱にしているテーマだ。
95年に『オウム真理教の軌跡』、2001年には『小泉純一郎の思想』と時代を映す鏡でもあった。86年の高木仁三郎著『原発事故 日本では?』、02年の『検証 東電原発トラブル隠し』(表紙は福島第一原発の写真)は今、改めて注目されている。
企画から刊行まで1〜2カ月。「雑誌と新書のあいだ」との位置づけだ。「その時々の問題をテーマにわかりやすく発信するという役割は、創刊時も今も変わらない」と岡本厚編集局部長は言う。
1号は『反核―私たちは読み訴える』だった。井上ひさし、大江健三郎ら作家が集まり、メッセージを寄せる。核戦争の危機を訴える声明は「決して断念することなく、いっそう力をこめて」と訴えていた。
30年後、824号の鎌田慧編『さようなら原発』は震災半年後の6万人集会の模様を収めた。作家の落合恵子はこう呼びかける。「原発と核が消える私たちのゴールに向かって、歩きましょう」「諦めません、慣れません、忘れません。歩き続けます」。日本は何も変わっていない。タイムリーかつロングセラーなブックレットが、教えてくれる。(中村真理子)