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2012年7月6日10時24分
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老いも幼きも五七五 91歳と8歳の視点

写真:田中瑠璃さん(右)と妹の真理さん=17日午後1時22分拡大田中瑠璃さん(右)と妹の真理さん=17日午後1時22分

写真:俳人の小原啄葉さん。盛岡市内の自宅で=19日午後3時9分拡大俳人の小原啄葉さん。盛岡市内の自宅で=19日午後3時9分

■言霊持つ才能、俳句一家で妹も

 俳句人口が低年齢層に広がる中、専門誌注目の子ども俳人がいる。俳句歴2年半、8歳の田中瑠璃。句からは子供らしい純粋さとともに、不穏な現代社会への視線も感じられる。

 ヒロシマのくだけちる音聞こえけり

 ざくろたべ黄泉の国へときえゆけり(「俳句界」1月号)

 詩の魂(たま)の脳より出でて蝶となる

 咆哮をあげ三月の海狂う(同7月号)

 「ヒロシマ」の句は、原爆ドームを見学した際、その場でできた。「ざくろ」はギリシャ神話からの連想、「咆哮」は大震災を思って作った。

 「俳句界」は、今年1月号の40歳未満の俳人を対象にした欄で起用し、半年後に再登場させた。林誠司編集長は「言霊がある。突出した才能」と評価する。

 瑠璃は幼い頃から本に親しみ、詩的な表現を口にしていた。俳句をたしなむ祖母の勧めで、6歳で母と共に俳句結社「河」に入会、大人に交じって毎月の勉強会に参加する。今年、「河」新人賞を最年少で受賞した。

 妹の真理(5)も、姉を追いかけるように俳句を始めた。真理の句「かれとうろうからのまんまでいきている」はユーモラスで、違った個性がある。祖母も交えて、家庭での話題は新しい季語や読めない漢字。締め切りは守るが、それ以外は自由に作る。

 小学3年生になった瑠璃は今、物語から漫画まで読書量は月に100冊以上。好きなのは「ハリー・ポッター、こち亀、ウルトラマン」で「将来の夢は本屋、趣味は立ち読み」。成長が楽しみだ。

  

■盛岡在住、戦争重ねて震災詠

 俳句歴80年、盛岡市在住の俳人、小原啄葉(91)が句集『黒い浪』(角川書店)で震災詠をまとめた。地震直後から沿岸部に通い、その目でみた事実を詠んだ。「90歳を過ぎると明日のことは分からない」と震災後1年を区切りにした。

 春泥のわらべのかたち掻き抱く

 安置所の裸体にほへる闇暑し

 いきいきと死にゐる爺(おど)の日焼顔

 長く県庁に勤め、沿岸部の地図は頭に入っていたが、「何もかも流されていた」。山口青邨に師事した俳人のモットーは徹底した写生。家や家族を流された友人たちと同じ光景を見て、悲しみの声を聞き、喪失の苦しみをともに感じて、作品にした。

 津波の死者と召集された中国戦線で見た死者が重なり、今までの記憶も投影した。

 「冷静にならないと俳句はできない。感情を共有しつつ、距離をとったから私は作れた。罹災(りさい)者の作品はこれから生まれるはず」

 これまで、戦争体験はあまりにも生々しい現実で、生き残った後ろめたさがあった。前作『不動』で、8冊目にして初めて戦争詠を世に出した。「今残さないと忘れられてしまう」。人生最後の句集のつもりだったが、その後震災が起きた。

 いくさにもつなみにも生き夕端居

 多くを経験した年寄りには、恐怖や惨状を伝える義務があると思っている。「つたなくても、実感をこめれば読者に伝わる」。生ある限り、俳句を作り続ける。(宇佐美貴子)

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