写真・図版 6月24日、コンサルタント会社エントグループによれば、中国のアニメ市場は2020年には2160億元(約3.6兆円)規模に達すると予想されており、中国のテクノロジー企業は、国産の人気キャラクターを開発・購入する「マンガ軍拡競争」に参戦している。写真は、上海で昨年7月に開催された中国国際動漫遊戯博覧会に参加したコスプレ愛好家(2018年 ロイター/Aly Song)

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 [杭州(中国) 24日 ロイター] - 1990年代、中国の港湾都市・大連で育ったチャン・ホンチャン氏は、「ドラゴンボール」や「NARUTO─ナルト─」といった日本のマンガにどっぷりと浸っていた。

 テレビで放映される日本のアニメシリーズやマンガはチャン氏や彼の同世代の人々の想像力をとりこにしたが、それに比べると、中国オリジナルのマンガは色あせて見えた。

 現在、チャン氏は中国で最も人気のある漫画家として、中国アニメの新たなうねりの最前線に立っている。この潮流を推進しているのは、国内の巨大IT・インターネット企業だ。チャン氏の最新のヒット作は、道教の僧侶として秘密の超能力を持つ高校生を主人公にしたもので、ネット上での閲覧回数は1億6000万回に達している。

 コンサルタント会社エントグループによれば、中国のアニメ市場は2020年には2160億元(約3.6兆円)規模に達すると予想されており、中国のテクノロジー企業は、国産の人気キャラクターを開発・購入する「マンガ軍拡競争」に参戦している。「ミッキーマウス」から「アイアンマン」に至るウォルト・ディズニー<DIS.N>の成功を再現するのがその狙いだ。

 こうした取り組みの鍵になるのが、チャン氏のような作家の育成である。

 チャン氏は仕事場である杭州のスタジオで「マンガを書き始めたときは、日本のマンガをまねしていたが、徐々に私自身のスタイルを身につけた」と話す。このスタジオで彼が描いた作品は、ゲーム開発も手掛ける中国ポータルサイト運営会社「網易(ネットイーズ)」<NTES.O>のウェブサイトで読者に提供されている。

 「中国の市場を理解し、中国のマンガ読者が何を望んでいるのかを理解するのに時間がかかってしまった」

 騰訊控股(テンセント)<0700.HK>や百度(バイドゥ)<BIDU.O>、ネットイーズなど国内の巨大テクノロジー企業も、チャン氏と同じことを理解しようと努力しているところだ。

 成功の方程式の1つは、中国の伝統的な宗教・文化的なテーマとキャラクターを使うことだ。エントグループの試算によれば、こうした戦略と、作画・ストーリー面での品質改善が功を奏し、中国のマンガ・アニメ市場は昨年1500億元規模に達したという。

 日米両国の市場には後れをとっているものの、追いつきつつある。リサーチ・アンド・マーケッツの報告によれば、アニメの制作本数では日本がトップだが、売上高では米国が優勢であり、2016年には世界全体で推定2200億ドル(約24兆円)とされる市場のうち、40%近くを占めている。この年、中国のシェアは約8%だった。

 中国企業にとって、魅力的なシリーズやキャラクターを開発できれば、ディズニーが開拓してきたような新たなビジネスチャンスにつながる可能性がある。シリーズ名を冠したテーマパークやゲーム、映画、テレビ番組、弁当箱や衣料品などだ。

 テンセントの北京支社でアニメ・マンガ著作権担当のシニアマネジャーを務めるXu Zhiwei氏は、「このビジネスを成功させるためには、優れたストーリー、質の高い制作、消費者の心に響くコンテンツが必要だ」と語る。

 テンセントはすでにアニメ・マンガ部門でいくつかの成功を重ねており、同社が急成長と高い株式時価総額を維持するうえでもプラスになる可能性がある。

 ゲーム、ソーシャルメディアで成功を収めたテンセントは、小新と呼ばれる漫画家の作品、人間と妖怪のあいだの恋愛を描いた「縁結びの妖狐ちゃん」の権利を購入した。

 テンセントがロイターに語ったところでは、このマンガを元にしたアニメシリーズは30億回超も視聴されており、6000万人以上の課金加入者を抱える同社の動画配信サイトのなかでも最大のヒット作の1つになっているという。

 このアニメの主要キャラクターである塗山蘇蘇(トサン・スース)は、ファストフードチェーンのケンタッキー・フライド・チキン(KFC)<YUM.N>のCMにも登場している。テンセントは現在、この作品のテレビシリーズや、登場人物を使ったビデオゲームの制作を検討している。

 <求められる国産ヒーロー>

 中国のエンターテインメント産業では、巨大テクノロジー企業がきわめて大きな役割を果たしている。映画からスポーツに至るまで、配信サイトの大半を支配しているのはテンセントとバイドゥと電子商取引最大手のアリババであり、この3社はソーシャルメディアやオンラインゲームでも優位を占めている。

 こうした企業は、アニメ(中国語で「動漫」)を好む若い世代に支えられたサブカルチャー台頭の波に乗ることを目指している。業界幹部によれば、こうした層が強く求めているのは、国産のヒーローが増えることだという。

 またこの世代は、親の世代が若者だったころよりも裕福になっており、使えるカネも多い。

 バイドゥのオンライン番組配信の「愛奇芸(iQiyi)」<IQ.O>事業担当の上級副社長を務めるGeng Danhao氏は、北京で開催されたイベントで、「特に2000年以降に生まれた若者は、消費にとても意欲的だ」と語った。

 四川省の大学生、21歳のZhang Tuoさんは、プラスチック製フィギュアからTシャツに至るまで、マンガ関連の商品に7000元以上も費やしたという。彼のお気に入りは、「SPIRITPACT─黄泉の契り─」「Monster List」といった国産の作品だ。

 南西部の都市・成都の学生、20歳のタオ・ジエさんは、中国のマンガはストーリー展開やアニメーション技術の点で改善されてきたと話す。国内の物語を使うことも魅力だと彼は言う。

 「中国のマンガ、アニメの多くは、すでに読んだことのあるオンライン小説が元になっている。原作のファンだから、マンガやアニメも気に入っている」とタオさんは言う。

 こうした変化は、テレビのゴールデンタイム枠を国産アニメ用に確保しようとする政府の支援策によっても後押しを受けている。

 巨大IT企業はマンガ、アニメへの投資を始めてはいるものの、まだディズニーの水準には及ばない。ディズニーはピクサー・アニメーション・スタジオを76億ドル、マーベル・エンターテインメントと「スター・ウォーズ」を製作するルーカスフィルムをそれぞれ約40億ドルで買収している。

 公開されている記録によれば、テンセントは昨年以来、マンガ、アニメ関連企業10社以上に投資しており、同社の映画部門は国内アニメ製作を支援するためのプロジェクトを立ち上げている。

 バイドゥが運営する「iQiyi」も国産マンガに巨費を投じつつある。同社が5月に発表したところによれば、中国の漫画家との契約や国産キャラクターの開発に2億元を投じる計画。これ以前にもアニメ関連プロジェクト10件に投資しているという。

 アリババとニュースアプリ「今日頭条」は、複数の制作会社を買収し、自社サイト内でアニメ配信プラットホームを立ち上げている。

 ネットイーズは昨年ディズニーと契約を結び、マーベル風だが中国的なスーパーヒーローを生み出そうとしている。

 ネットイーズ・コミックスでマーケティング・ディレクターを務めるLuo Qiandan氏によれば、同社は自社サイトから取得したビッグデータを用いて、マンガ愛好者が何を求めているか分析し、漫画家にフィードバックしていくという。

 また同社は、その他にも中国風の水墨画技法や宗教的なテーマなどの要素を採用しつつある。

 「中国的な要素、中国的なスタイルを使うことを誰もが試みている」と同氏は語った。

 (Pei Li記者、Anita Li記者、Adam Jourdan記者、翻訳:エァクレーレン)