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深い哀れ、不条理表現 野村万作、狂言2作

2006年02月20日

 人の心の複雑な陰影を見つめた狂言に、野村万作が続けて取り組む。22日に上演する「茶子味梅(ちゃさんばい)」と、3月の「月見座頭」。狂言から、笑いの要素だけでなく、深い悲哀や不条理を引き出そうという姿勢が現れている。

 二つの曲のシテ(主役)はいずれも少数派の人物だ。

 「茶子味梅」は、中国から来て日本で長く暮らす男の話。彼は最近「ちゃさんばい」などと意味不明のことを言って泣くようになった。故国に残した妻を恋しがったり、茶や酒を飲みたがったりしていたのだ。それを聞いた日本人の妻は……。

 夫の話す言葉の響き(唐音(とういん))が笑いを誘う作品だが、万作は表面的なおかしさではなく「異国に一人いる男のかなしみや故国の妻を思う心の変化などを舞を通して表現したい」と言う。

 一方の「月見座頭」は、名月の夜に河原にやって来た座頭(盲人)が主人公。男と出会い、楽しく酒を酌み交わすが、別れを告げた直後に男は態度を変え、座頭に乱暴する。

 野村家の所属する和泉流にはない曲だが、万作の父・六世万蔵が廃絶した流派の台本を研究して上演し始め、万作が練り上げながら取り組み続けている。

 「盲人が理由もなくいじめられる理解しにくい部分もありますが、あえて理屈づけはしない。人間は突然変わることもある不条理な存在だということを踏まえ、あわれっぽくせず、普通の人間同士として演じたい」と話す。

 今回も月見の場面などで新しい工夫を加える。「古典はむやみに演出し直すべきではない。私の工夫は、過去に固まってしまった部分をほどいて、磨き直す作業です。それを続けることで、古典は生きてゆくのだと思っています」

 「茶子味梅」は22日午後7時から、東京・有楽町朝日ホール「狂言の世界」で。ほかに萬斎の「小傘(こがらかさ)」など。7000円。電話03・3267・9990(ホールチケットセンター)。

 「月見座頭」は3月2〜12日に、東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演される「狂言劇場」のAプロで。Bプロ(「悪太郎(あくたろう)」など)との交互上演。7000円、4000円。事前登録での学生割引あり。電話03・5432・1515(劇場チケットセンター)。

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