不惑・萬斎、充実の秋 「敦」練り直し、改めて「釣狐」
2006年08月30日
狂言師、野村萬斎がこの秋、二つの山に挑む。一つは構成・演出・出演の3役で高い評価を得た「敦」を練り直しての上演。もう一つは古典の大曲「釣狐(つりぎつね)」だ。伝統と現代の双方を見つめてきた萬斎は、今年不惑。思いも新たに充実の舞台を目指している。
 「全身の筋力と心肺機能の強化。釣狐は体作りから始めます」と野村萬斎=東京都内で、徳丸篤史撮影
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「敦」は、詩を極めようとして虎になってしまった男を描く「山月記」と、弓の修業を重ねた男が超俗の境地に至る「名人伝」を軸に、作家中島敦の内面に迫った舞台。父の野村万作以下、一門の狂言師が古典の技法を生かしながら「現代の演劇」として演じる。
昨年の初演で、紀伊国屋演劇賞と朝日舞台芸術賞をダブル受賞した萬斎は、この再演を「作品を再創造する機会」と考えている。
「評価していただいた舞台を作り直すのは勇気がいるし、苦しい作業ですが、作品を磨きながら上演を重ね、レパートリーといえるものにしてゆきたい。初演では小説の立体化に力を注いだが、今回はプロローグ、エピローグをさらに工夫し、より鋭く中島敦の世界観に切り込みたい」
一方の狂言「釣狐」は、これを演じれば一人前とされる大曲。22歳で初めて演じ、その後2度取り組んだが、萬斎を襲名してからは初の公演になる。
古狐を、前半は人に化けた姿で、後半は本性を現して演じる。せりふや舞などに加え、ぬいぐるみを着て、面をつけ、中腰の無理な体勢で激しく動く肉体的にも過酷な演目だ。万作が何度も取り組み、高い評価を受けてきたが、萬斎は「それに反発も感じていた」と明かす。
「公演前の父はピリピリしていて、家族は迷惑するんです。それで多少アレルギーがありました。自分には別の道があるのではとも思っていた」
しかし、ここ5年ほどで考えが変わってきた。
「活動が外へ広がるにつれ、自分の核である狂言への意識を取り戻したいという気持ちが強くなった。ギリシャ悲劇などの大役を通ったことで、改めて狂言の技術の連続である『釣狐』に無心に打ち込みたくなりました。20代では文字通り血みどろで夢中で演じましたが、40になった今なら、もう少し何かできるのではないか。父の大きな存在にぶつかろうと思います」
「敦」は9月1〜18日、東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアター。電話03・5432・1526(劇場)。兵庫県西宮市(21、22日)、北九州市(26、27日)でも。「釣狐」は11月8日、東京・宝生能楽堂を皮切りに、来年1月まで名古屋、京都、福岡、大阪で上演。電話03・3997・8778(万作の会)。
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