現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>舞台>古典芸能> 記事 野村万作、集大成の「狂言十八選」を全国で2007年03月08日11時50分 狂言師の野村万作さん(75)が、「万作・狂言十八選」上演に取り組んでいる。1月に東京・国立能楽堂「二人袴」「靱猿」でスタートし、3月3日には奈良市で第2回公演が行われた。今後も9月出雲大社(島根県)、10月中尊寺(岩手県)など各地をめぐり、約3年で完結させる。万作さんの活動の集大成ともいえる連続公演だ。 奈良県新公会堂能楽ホールで上演されたのは「川上」。吉野の里に住む夫婦が登場する奈良にゆかりの作品だ。盲目の夫(万作)が地蔵の霊験で視力を取り戻すが、妻(石田幸雄)との離縁が条件づけられる。妻は別れないと言い張る。夫は再び光を失い、妻に手を引かれ帰ってゆく。 運命と情愛の葛藤(かっとう)を描いた作品で、近年万作さんは熱心に取り組んでいる。狂言では珍しく笑いがなく、残酷にも思える結末だが、橋掛かりを歩む夫婦からは温かな空気が生まれた。 「十八選」ではこうした名作を、ふさわしい場所で上演する。「和泉流254演目(曲)の中で代表的な、今の観客がおもしろいと思える演目を選びました。野外での上演もあり、自然を感じながら演じるのが楽しみです」と万作さん。 「語・謡・舞の要素が入った演目を大事にした。そこに狂言らしい和楽の世界があるように思うのです」 「お家芸というわけではない」というが、選択には自負がにじむ。「祖父(五世万蔵)も父(六世万蔵)も得意とし、自分も得意としなければという使命感を持ち、次の世代にしっかり伝えねばと考えている曲を選んだつもりです」 18曲からは狂言の多様性が浮かび上がる。様式性の強い「三番叟」「奈須与市語」「釣狐」があれば、写実的な「木六駄」「川上」もある。海外で度々演じた、1枚の袴を父子が分け合って着ける「二人袴」のような愉快な曲も入れた。シェークスピア喜劇をもとに英文学者の故高橋康也さんが書いた「法螺侍」は、実験精神にあふれる活動を象徴する。 体力の必要な曲も多い。すべてシテ(主役)を演じるつもりはないが、「父が喜寿で演じた『花子』は是非やりたい」と言う。 注目は万作さんの代名詞とも言われた「釣狐」。狐の着ぐるみの上から衣装、面を着け、人間に化ける前半、獣の激しい動きを見せる後半と、若い演者にとっても過酷な舞台。93年にいったん演じ納めをしたが。 「どうするか決めていないのです。紋付き袴で演じる案もあり、それなら……という気持ちもあって」 「いまは、柔らかく語りかけることの大事さを感じています。例えば『三番叟』でも、力の発散ではなく、内からめでたさがにじみ出るように。これが70歳を過ぎた心境ですね」 ◆今後の公演の問い合わせはSAP(03・5226・8537)。 ◇ 【万作・狂言十八選】 二人袴(ふたりばかま)、靱猿(うつぼざる)、川上、三番叟(さんばそう)、棒縛(ぼうしばり)、萩(はぎ)大名、木六駄(きろくだ)、髭櫓(ひげやぐら)、庵(いおり)の梅、舟渡聟(ふなわたしむこ)、茸(くさびら)、法螺侍(ほらざむらい)、花子(はなご)、武悪(ぶあく)、柑子(こうじ)、奈須与市語(なすのよいちのかたり)、宗論(しゅうろん)、釣狐(つりぎつね) PR情報この記事の関連情報文化・芸能
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