現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>舞台>古典芸能> 記事 舞踊の花柳流 ざらつく伝統の世界2008年04月23日11時36分 日本舞踊の最大流派・花柳流が、きしみ音を発している。昨年5月に死去した三代目宗家家元・花柳壽輔の跡目を巡る訴訟が起きているからだ。 火ぶたは3月21日に切られた。三代目の遠縁の舞踊家青山貴彦氏が、都内にある三代目の自宅兼けいこ場の土地・建物について、相続財産管理人に対し、「正当な家元」の自分に引き渡すよう求めて東京地裁に提訴した。4月17日には、先に四代目襲名を公表した花柳寛氏を相手取り、家元は寛氏でなく自分だという地位確認の訴訟も起こした。 訴状などでは、貴彦氏は02年に三代目から次期家元承継の申し入れを受け、03年には建設会社を辞めて受諾したという。三代目の指導下、諸芸の修練、宗家伝承品の管理など「帝王学」を学んだというのが貴彦氏側の言い分だ。 寛氏も三代目の遠縁で、後見人だった。流派の理事会に四代目襲名を打診されて承諾し、昨年7月、会見して公に。今年5月に東京・歌舞伎座での披露公演が控える。しかし、貴彦氏側は「当流には諮問機関を設け、宗家家元の補佐をする」という花柳流規則第15条を持ち出した。諮問機関の理事会に家元選出の権能はないと言い始めたから、さあ、ややこしい。 つまり、新家元の根拠は先代の指名だけ、という主張。だが三代目に子はなく、後継者を記した文書類を残さず急逝したという……。これじゃ、いつまでたっても、家元は決まらないじゃないか。 花柳流の門弟は約2万7千人。細かい傷はあっても、この「大クジラ」は悠然と泳ぎ続けてきた。貴彦氏の祖父で、踊りの名手だった故・花柳壽楽氏ら重鎮たちが三代目をひしと支えたからだろう。創流も可能な名手が禁欲的に、こぞってもり立てた。 互助精神で織り上げられた麗しの伝統世界。今回の訴訟は、これを硬質なクワでかき回す、ざらつき感がある。 後継の家元を指名する習慣は、そもそも「麗風」の中で醸成されたように思う。「麗風」を差し置いて訴訟を起こす。自家撞着(どうちゃく)のそしりは、まぬがれ得ないのではないか。(米原範彦) PR情報文化・芸能
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