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「老い」魅せる舞台続々 90〜60代一座旗揚げ

2006年12月02日

 高齢者を中心にした演劇公演が相次ぐ。90〜60代のメンバーによる「パラダイス一座」が旗揚げ公演するほか、79歳の観世栄夫を筆頭にベテラン俳優陣が活躍する作品も上演される。高齢者劇団「さいたまゴールド・シアター」も発表会を開催中だ。「老い」を意識した表現から、何が生まれつつあるのだろう。

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「オールド・バンチ」の出演者。右手前が最年長の戌井市郎

 文学座代表の戌井市郎=90歳▽日本劇団協議会会長も務めた演出家、瓜生正美=82歳▽多くの名作ミュージカルを演出する中村哮夫=75歳▽本多劇場グループ社長、本多一夫=72歳▽「ドラえもん」スネ夫の声でもおなじみの俳優で劇団も主宰する肝付兼太=71歳。最年少は68歳の作曲家、高橋悠治。

 パラダイス一座結成に集まった面々だ。大半は俳優としては素人。信用金庫に立てこもった老人たちのおかしくも激しい闘いを描く舞台「オールド・バンチ〜男たちの挽歌(ばんか)」(山元清多作、6〜13日、東京・下北沢のザ・スズナリ。問い合わせ電話03・5272・1785、当日券のみ)に向けて、文字通り、渾身(こんしん)のけいこを続けている。

 一座の仕掛け人で、演出を担当する流山児祥(59)は、86歳で亡くなった母の介護を通して、老い衰えてゆく体を美しいと感じたという。

 「そうした身体と、芝居をしたいと思い、先輩たちに集まってもらった。自分の歴史を背負いながら、命を削って演じ、恥をかくのもいとわない人たち。その『老い』のすてきさを観客に魅せつけたい」と話す。

 劇中のせりふには、演技の巧拙とは別の次元の説得力が生まれている。戦争末期の青年の気持ちを語る場面は、演者の軍隊体験に基づいている。「だから、どんなに長いせりふでも覚えられる。体験の重みがしゃべらせる」(瓜生)

 演じるプロではない人々の存在そのものから生まれる表現の豊かさ。「ゴールド・シアター」を主宰して半年余になる蜷川幸雄(71)も、そこにひかれているようだ。

 「プロの俳優の整理された表現からは捨てられた、生々しい生活感、一人一人が違う人生を生きてきた雑多な感じ。この魅力は何なのか……まだ、はっきり分からない。でも、従来の演劇とは違うものが生まれている実感がある」

 彩の国さいたま芸術劇場で上演中の「鴉(からす)よ、おれたちは弾丸(たま)をこめる」(清水邦夫作、4日まで。電話048・858・5511)では、老婆たちが裁判所を占拠し、暴れる。71年の初演時には若者の反逆精神をひねった形で託す存在だった老婆を実年齢に近い人々が演じることで、作品にまた別の意味が加わった。

 川村毅(46)が作・演出する「黒いぬ」(6〜10日、東京・新宿の紀伊国屋ホール。電話03・3344・3005)は、観世、坂上二郎、菅野菜保之らが、秘密工作員の老後を演じる喜劇。「年齢を重ねることでにじむ人間のおかしみを、尊敬を込めて表現したい」と川村は言う。

 3作に共通するのは、平穏な日常に違和を生み出す、過激な老人像だ。

 「オールド・バンチ」にも映像出演している観世はこう語る。

 「老人というのは頑固なものだから、腕力とは別の意味で、暴力的な存在になるのは当然だ。20代で1メートル跳べた体も、80歳では30センチしか跳べなくなる。その体で1メートルと同じ効果の表現を追求し続けるのだから、老いるというのは、挑戦することでもあるのです」

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