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築地小劇場の「音」発見 創立メンバー和田精の遺品

2007年01月18日

 大正から昭和の初期にかけて新劇の基礎を作った築地小劇場。そこで上演された演劇の「音」の資料が見つかった。同劇場創立メンバーの一人、和田精(せい)(1893〜1970)の遺品で、効果音を書き込んだ台本や劇中音楽の楽譜などが多数ある。同劇場の音響の記録はこれまでほとんど見つかっていない。台本や写真などとは違う角度から草創期の新劇の姿を伝えている。

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発見されたマクベスの台本や楽譜

 和田精は、イラストレーター和田誠さんの父。同劇場で音響、照明を担当し、1924年の第1回公演から80回を超える公演を手掛けた。

 資料は木箱二つとトランク一つに入って、東京都内の誠さん宅に眠っていた。劇団「こまつ座」(井上ひさし代表)が、交流の深い誠さんから資料を借りて調べたところ、築地小劇場当時のものであることが分かった。

 内容は、赤鉛筆で効果音や音楽について多くの書き込みがあるガリ版刷り台本約80冊と、手書きと出版物半々の100部を超える楽譜、写真のガラス乾板など。

 手書き楽譜の大半は題や作曲者が分からないが、公演名が記された楽譜もあり、第1回公演「海戦」で演奏されたとみられるトランペットの短い曲や、フランス革命を題材にした第2回公演「狼」のトランペットと小太鼓による「死刑の太鼓」の部分などが確認できる。

 子供向けパントマイム劇「遠くの羊飼」(24年)の譜面は完全な形で見つかった。題名はないが、王女(譜では女王)、羊飼、山羊、宰相といった役名とストーリーが、同劇場プログラムなどと一致する。シンバル、柝(き)、鈴、樽などで音を出すリズムと俳優の動きが3枚の五線譜に記されている。

 「マクベス」と書かれた袋に入った、ピアノ、クラリネット、バイオリン、チェロ、コルネットの手書きパート譜には、劇中のどこで演奏するかが書き添えられていた。台本に書かれた「嵐」などの効果音と突き合わせると、27年の青山杉作・小山内薫演出、丸山定夫と東山千栄子がマクベス夫妻を演じた、森林太郎(鴎外)訳のシェークスピア悲劇の一場面が推測できる。

 楽譜を見た、演劇にも詳しい音楽評論家の片山杜秀さんは「シェークスピアにふさわしい古風な感じを出そうと工夫したと思われる、かなり凝った曲ですね。楽器編成も独特です。外国曲をアレンジしたのではなく、オリジナル作品だと思うが、とても達者に書かれたものという印象を受けます」と話す。

 また、27年上演の「平行」の題名が書かれた楽譜は、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」がバイオリンとギターに編曲されたものだった。

 片山さんは「これまで分からなかった築地小劇場の音楽資料が見つかったのは意義深い。特に『遠くの羊飼』はタイミングやリズムが書かれており再現演奏が可能。大きな発見だと思う」と話す。

 資料にはこのほか、築地小劇場の俳優・演出家が参加した、本格的ラジオドラマの先駆け「炭坑の中」の台本や、歌舞伎や舞踊の舞台などが写っている171枚の写真ガラス乾板もあった。

 資料の一部は今月下旬開幕予定のこまつ座公演「私はだれでしょう」に合わせて発行される雑誌「the座」に掲載される。問い合わせは、こまつ座(03・3851・6180)。

〈キーワード:築地小劇場〉

 小山内薫、土方与志らが1924(大正13)年に、現在の東京都中央区築地に開いた日本初の新劇の常設劇場(約500席)。千田是也、山本安英、滝沢修、杉村春子ら、戦後の演劇界を支えた人々が巣立った。小山内急死をきっかけに、劇場は29年に分裂。建物は45年に空襲で焼失した。

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