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〈第6回朝日舞台芸術賞 特別賞〉小幡欣治さん

2007年02月01日17時52分

 最新作「喜劇の殿さん」民芸公演後の夜。長いせりふと格闘した古川ロッパ役の大滝秀治に声をかけた。「あなたを楽さしてはいけない。こういうひどい目にあわせて長生きさせたい」。「うそつけ」。81歳になる大滝が笑った。

写真小幡欣治さん

 戦争協力した喜劇スターの栄光と悲惨を、骨太に描く力作だった。「ロッパの日記を読むと、多くの戦意高揚劇をやりながら、戦後はその反省がへんりんもない。でもけろっと忘れたのは、皆同じでないか」

 出発は新劇。初期作「畸型(きけい)児」は、社会への怒りがうっ屈する。「下積みの若者に自画像を投影させた。書いた物を振り返るとすべてコンプレックスの産物。僕は今でも幸福ではない」

 菊田一夫に信頼された。30年余、「あかさたな」「恍惚(こうこつ)の人」「喜劇 隣人戦争」と東宝現代劇の屋台骨を支える。菊田の世界はショックだった。「男女の愛の物語で舞台が成立している。マスターしようと思った。でも商業演劇はスターに見せ場を用意し、結末も暗くてはいけない。もう自由に書きたい」

 母なる新劇への回帰。民芸への新作は6本になる。「最近はこれが最後と言い聞かせながら書いている。『熊楠の家』では、人間を追究すると、いつのまにか環境問題にぶつかった」

 57年の劇作活動で、脚色を含め戯曲は100本を超す。「恥ずかしい。代表作なんてないよ。でも書くならより高い所へいきたい」

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 〈おばた・きんじ〉 28年生まれ。56年に「畸型児」で新劇戯曲賞(岸田国士戯曲賞)を受賞。60年代から東宝現代劇に「三婆」などを書き、演出する。94年から「熊楠の家」(菊田一夫演劇賞特別賞)など新作を劇団民芸に書く。

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●受賞あいさつから

 最近は1本書くごとに疲労が深まり、劇作に幕を引こうかと妻に相談していた矢先に受賞を知らせをいただいた。私は欲が深いのか、節操がないのか、こんな賞を頂戴したのだから、せっかくだからもう少し書いてもいいかなという気になりました。私を支えてくれた家族にも礼を言いたいと思います。

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