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日本の戯曲、世界へ 鴻上尚史、野田秀樹、三谷幸喜…

2007年05月23日11時09分

 日本人の現代劇の海外での上演が活発になっている。「日本文化の紹介」の枠を超え、現地の劇場のプログラムとして、かなりの期間公演されているのが特徴だ。演劇の都ロンドンでも人気作家の作品が様々な形で取り上げられている。言語の壁を越えて、現代戯曲が世界に向かう。

写真ロンドンでの鴻上さん

◇「紹介」の枠越え長期公演も

 鴻上尚史さん(48)はいまロンドンで自作「トランス」英語版を演出している。男女3人が自分とは何かを見つめる戯曲。公演は自身の活動母体サードステージとロンドン在住の加彩エミプロデューサーが共同製作し、先鋭的な舞台を手がけるブッシュ劇場と提携、6月6〜30日に公演する。

 鴻上さんは「日本では英国戯曲の上演や演出家の招聘(しょうへい)が多いが、その逆は極端に少ない。あまりに輸入超過。もっと出て行くべきだと思っていた」と話す。

 俳優とスタッフは全員ロンドンで選んだ。「英語での演出は大変だが、自分を鍛えるいい機会。何者でもない自分がどう受け入れられるか、冒険の旅に出た気分です」。劇場側は「作品がおもしろい。英国の若い劇作家の発掘と同じ感覚で取り上げた」という。

 ロンドンですでに英語作品2本を発表した野田秀樹さん(51)は、次のプロジェクトが動き始めた。能を素材にした新作を英国の俳優と作る計画だ。野田さんは「異文化がぶつかる所に新しいものが生まれる」と、03年「赤鬼」を英訳上演、昨年は英語で書いた「THE BEE(ザ・ビー)」が高く評価された。

 「ザ・ビー」を上演したソーホー劇場は次作にも参加する予定。代表マーク・ゴッドフリーさんは「『赤鬼』を作る過程を見て、一緒に仕事をしたいと思った。『ザ・ビー』は(暴力と報復という)普遍的な主題を、身体性と想像力を重視し、俳優が自分と異なる性を演じる英国人にはなじみの薄いスタイルで演出して、成功した。観客は『こんな舞台は見たことがない』と興奮していました」と語る。

 「私たちの劇場は国際都市ロンドンの中心で、その空気を反映しながら新しい演劇を世に出すことを目指している。野田さんとは共同作業を続けたい」

 三谷幸喜さん(45)が書いた「笑(わらい)の大学」の英語版「ラスト・ラフ」は、商業劇場街ウエストエンドでの成功を目指している。プロデュースは、多くのロングラン作品を手掛けるビル・ケンライトさん。「1〜3月の巡演の反響がとてもよかった。興行に有利な時期、来年早々の開幕を考えている」と言う。

 「日本で仕事をした演出家が戯曲を持って来た。神様からの贈り物だと思ったね。喜劇の中に悲劇的な要素があるこういう芝居は世界中のプロデューサーが探しているんだ。作者は日本で有名らしいが、そんなことは関係ない。問題は『いい芝居』かどうかだけ。この作品には特に時間と力を注いできた。絶対大ヒットさせる」と張り切っていた。

◇「翻訳も意識し執筆」

 他の国に目を転じると、平田オリザさん(44)の作品の広がりが際立つ。多くの戯曲が多様な言語に翻訳され、海外での上演、出版も多い。例えば代表作「東京ノート」は仏、英、韓、伊、独、中、タイ、マレー、インドネシア語に。今年は仏ティヨンビル国立演劇センターの依頼で書いた「別れの唄(うた)」が1月に開幕、6月中旬までフランス各地で上演されている。

 ニューヨーク・オフブロードウェーではこの春、坂手洋二さん(45)が「ひきこもり」を題材に書いた「屋根裏」が1カ月余り上演され、注目を集めた。坂手作品も英訳が多く、近く選集が出版される。

 日本劇作家協会会長でもある坂手さんは「戯曲が海外で翻訳上演されるのは自然な流れ。違う文化の中で上演される自作から得るものも大きい。最近、翻訳を意識して執筆するようになった。日本語はもちろん大事だが、海外でも理解される論理で作品を書くことも必要だと思う」と語る。

 また「上演料などの条件は海外作品を日本でやる時と同等になるよう交渉した。労力はかかるが、作品の質を認めてもらえば実現できる。そうした知識の共有や、海外から日本の戯曲の情報を得やすい環境を作るのが今後の課題」とも話している。同協会が99年から刊行をする英訳戯曲集「現代日本の劇作」10巻は来年完結予定だ。

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