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宮本輝のロングセラー小説「錦繍(きんしゅう)」が、初舞台化

2007年06月25日14時31分

 宮本輝のロングセラー小説「錦繍(きんしゅう)」が、「レ・ミゼラブル」で知られる英国の演出家ジョン・ケアードの脚本・演出によって初めて舞台化される。離婚した男女の14通の往復書簡でつづられる作品には、これまで多くの映画化や舞台化の依頼が寄せられた。それらを断ってきた宮本が、西欧の辣腕(らつわん)演出家に自作を託したのはなぜか。

写真上演される銀河劇場で談笑する作家の宮本輝(左)と演出家のジョン・ケアード=蛭田真平撮影

 「初めてお会いしたとき、ケアードさんの頭の中には、すでに脚本や演出について明確なプランがあった。演出家、人間としての彼を信じることができた。あとは素知らぬ顔をして、劇場で舞台を楽しみたい」と宮本はほほ笑む。

 「レ・ミゼラブル」「ベガーズ・オペラ」日本版の演出など国内での仕事も多いケアードは、かねて日本人作家の作品を演出したいと希望してきた。昨年から1年以上かけて「錦繍」の英語版を詳細に読み込みんだケアードは「あらゆる世代の観客を引き寄せ、感情の扉を開く力のある作品になると思った」と語る。

 夫が起こした無理心中事件のため離婚した元夫婦が紅葉の蔵王での偶然の再会を機に、手紙のやりとりを始める――こうして始まる「錦繍」は、別れてから10年間の男女の歩みと、生と死をめぐる議論を、巧みな描写と美しい言葉が印象的な書簡体に封じ込めた小説。81年に宮本が34歳で発表した意欲作だ。

 「広告代理店に勤めていた25歳のとき、いまでいう重症のパニック障害にかかり、30代半ばまで苦しんだ。結核で療養生活もし、いや応なく死を意識する日々の中で構想が生まれた」と宮本。厳しい闘病と執筆の日々の心の支えになったモーツァルトの音楽も、効果的に作品中に採り入れられている。

 ケアードは元夫婦に鹿賀丈史、余貴美子を配し、高橋長英、馬渕英俚可、西牟田恵らが手紙に登場する他の人物を実際に演じるスタイルをとる。「芝居は自由に表現の形を決められるのが長所。映像でこの世界を表現するのは、もっと難しいでしょう。心の奥底に潜む深い感情まで表現できる俳優ということで、鹿賀さんと余さんを起用しました」

 日本人を妻に持つケアードは、邦楽界のホープ、藤原道山の尺八の生演奏を採用するなど、日本人の美的感覚や情緒にも正面から挑む。「思索することを楽しめる人々に受けいれられる作品にしたい」。原作者と演出家に共通する願いは、日本初演を成功させ、英国公演を実現することだ。

 ◇7月21日〜8月12日、東京の天王洲銀河劇場。9000、6000円。ホリプロ(03・3490・4949)。

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