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岩松了戯曲、蜷川幸雄演出「船上のピクニック」

2007年06月26日15時49分

 81歳から56歳の46人からなる劇団が、岩松了の書き下ろし戯曲、蜷川幸雄演出という豪華な布陣で、初の本格公演に臨んでいる(今回は44人が出演)。

 舞台は客船。ホテルグループをリストラされたベテラン従業員たちが新しい職場となる外国の保養地に向かっている。雇い入れたホテル経営者が、父親の反対で40年前に別れた恋人と晴れて結ばれる祝いのパーティーがデッキで開かれていた夕刻、漂流していた難民が救出される。言葉の通じない人々の出現で、船内に不穏な空気が流れ始める。

 岩松戯曲ではいつも、静かな言葉や行動の裏に、激しい感情や衝動が渦巻き、人物の間に流れる空気の変化が意地悪なほど微細に描かれる。今回も岩松はそのスタイルを駆使して、緊張感に満ちた、破格の人数の群像劇を生み出した。

 演出は派手な手法は一切使わず、人物像と人間関係を丁寧に表現することに力を注ぐ。その結果、登場する一人ひとりが濃厚に、観客の頭に焼き付く。再び職を得た喜び、過剰な気負い、環境や年金受給への不安、家族への思い、長年一緒に働いた者同士の仲間意識と反目、といった演技に説得力がある。

 「いるいる、こういう人」という現実味が強烈で、それぞれが役柄の背景を想像させる雄弁な雰囲気を持っている。高齢で新天地に賭けて海を渡る登場人物の高揚感と切迫した思い。演劇に挑んでいる劇団員の現実。両者が同調し、演技の巧拙を超えて観客に迫ってくる。

 不条理劇の名作「戦場のピクニック」と同じ音の題名を持つこの劇は、難民が登場する後半、さらにスケールの大きな展開を見せる。船は本当はどこに向かっているのか。不安が臨界まで高まった果てに何が起こるのか。船旅は次第に謎めき、死の気配が立ち上る。この船が現代日本の暗喩(あんゆ)にも見えてくる。その意味でも考えさせ、見応えがある舞台だ。井上尊晶演出補、広崎うらん振り付け。

 7月1日まで、さいたま市の彩の国さいたま芸術劇場小ホールで。

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