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舞台美術の多様性競演 プラハ・カドリエンナーレ

2007年07月04日11時35分

 ヨーロッパの古都プラハで、舞台美術の国際展「プラハ・カドリエンナーレ2007(PQ07)」が開かれた。世界中から演劇やオペラ、ダンスの装置や衣装のデザイナーらが集い、4年に1度催される「舞台美術のオリンピック」だ。展示を通して見えたのは、地域文化に根ざした舞台芸術の多様性、そして、舞台空間で何を見せるかという可能性の無限の広がりだった。

写真回転ずし店をイメージした日本の展示
写真最高賞を受けたロシアの展示
写真日本の学生ブース

 チェコ文化省などが支えるPQ07は6月14〜24日、19世紀に建てられた「産業宮殿」を主会場に行われた。40周年の今回は過去最多の約55の国・地域が参加した。展覧会を中心にワークショップ、セミナーなど多彩な催しがあった。

 展覧会は国・地域単位で参加するコンペで、「ナショナル」「学生」「劇場建築」の3部門。審査員11人の中に舞台美術家の松井るみさんが選ばれた。

 ナショナル部門には、実際に上演された舞台の装置模型、写真や映像、デザイン画、設計図、衣装などが出品される。現代美術のインスタレーションを見るようなおもしろさに加え、展示物から物語を読み取り、上演を想像するのが楽しく、一つ一つに長い時間見入ってしまう。

■「カワイイ」

 米国の華やかさ、英国の洗練された美などはもちろん見ごたえがあるが、ポルトガル、ベラルーシ、スロバキア、ドイツ、チリ、メキシコ、イスラエル、南アフリカなどの展示で、鮮烈な表現に出合った。

 日本のテーマは「KAWAII(カワイイ)」だった。キュレーター(企画責任者)の島川とおるさんは「ポップカルチャーを象徴する言葉『カワイイ』が世界に広がっていることを踏まえ、日本の現代社会を反映した舞台美術を発信する」と狙いを語る。

 回転ずし店をイメージした台に、歌舞伎座「NINAGAWA十二夜」(金井勇一郎)▽劇団四季「鹿鳴館」(土屋茂昭)▽演劇集団円「ロンサム・ウェスト」(伊藤雅子)など12演目の模型を載せた。見学者の人気を集め、海外の専門家にも「とてもきれい」と好意的に受け止められた。

 コンペ最高賞は、自国の劇作家チェーホフを主題にしたロシアに決まった。

■床水びたし

 床は水びたしで、見学者は靴の上から大きな黒いゴム靴を履き展示スペースに入る。模型は、積み上げた本や皿、壊れたいすなどの上に置かれ、照明も暗い。この不安定な環境の中にいると「見る」意識が鋭くなり、「かもめ」「桜の園」などの劇世界に深く入ってゆける。「ロシア的メランコリー(悲哀)」に満ちた雰囲気の魅力も指摘された。

 アジア圏で注目されたのは台湾だった。竹で組んだブースで、伝統劇と、映像など現代の技術を活用した舞台を同時に紹介し、そのバランスが評価を得た。

 学生部門では各国の個性がさらにくっきりと出た。

 日本からは大阪芸大、武蔵野美大、多摩美大、玉川大が合同で出展した。古典劇の装置模型も展示されたが、灰色の外壁を埋めるグッズやポスター、変形した人形などが生み出す「老いたキャラクター文化」の印象が強く残った。

 あふれるモノと退廃のにおいは、確かに現代日本の一面を映す。それは、「無駄のない表現」で学生部門金メダルを受けたラトビアや、ギリシャ劇の精巧な装置模型などでユネスコ賞を受けた韓国、「劇場―政治―都市」が主題の内省的なセルビアのブースなどが並ぶ学生部門で異彩を放ってもいた。

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