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少数民族の日常舞う ヤン・リーピン主演「シャングリラ」

2008年03月10日14時50分

 中国少数民族の生活に根ざした歌舞を、中国の舞踊家ヤン・リーピンが構成・主演する舞台「シャングリラ」が14日、東京・渋谷のオーチャードホールで開幕する。「中国雲南省の生活に伝わる、各民族の優れた芸術を整理しただけです」とリーピン。生活とはかくも、いとおしいものか。

写真ヤン・リーピンと、その長いツメ=東京都内で

 土くさい色彩の洪水、荒ぶるリズムの乱打、そこに人間離れした声が侵入。群舞がにぎやかな輪をなし、独舞が静かな線を描く。太陽と月が昇り、人は鳥となり植物となる。愛、生殖、自然界と相わたる労働、信仰などが氾濫(はんらん)する――。「シャングリラ」の舞台だ。これはもはや「原始の祭典」と言っていいだろう。

 タイトルは桃源郷の意。雲南省は中国でも民族数が最多で、農・牧畜業と不可分の舞踊や歌の宝庫だという。自身が同省の少数民族ペー族出身のリーピンは、00年から1年以上、25余りの少数民族が暮らす省内山村部などをへめぐった。歌舞や楽器などを収集した。

 音楽は弦楽などを用い、現代風にアレンジしたが、「群舞は百%、土地のもの。土着で原始的な本物であることが大事で、加工を極力排除した」と話す。非洗練の野太い生命力を保っているというのだ。

 従って、ストーリーはない。「プロローグ 創世記」「太陽」「大地」「故郷」「聖地巡礼」「エピローグ 孔雀(くじゃく)の精霊」の6部構成。生活のあらましがオムニバスに流れていく。リーピンのこだわりでイ族、ワ族、ハニ族などの農民や牛飼いら約50人をスカウト。舞踊集団の約8割を占めるという。衣装、太鼓、仮面なども日常品らしい。

 少数は、少数であるがゆえに芳烈な個性として世界を圧することがある。この舞台も03年に中国・昆明で初演され、欧米やアジアを巡演。「シルク・ドゥ・ソレイユ」などと比較されることが多いという。

 群舞・群唱以外に、目を見張らせるのが、リーピンの創作独舞。月光の舞では、光を浴びた肢体が影絵のように波打つ。女性の身体の特色を「胸・腰・ひざの湾曲」ととらえ、一瞬のうちにフォームを切り替えてゆく。孔雀の舞では指先の妙技や回転技が幻想的に映える。「孔雀のような技法ではなく、そのものになろうとする」。両手のツメは30年前から伸ばし、今や表現の一部だ。

 伝統舞踊はほぼ独学。省歌舞団の舞踊劇で注目された。創作は二十数年前、25歳ごろから取り組む。「抽象的なイメージが好き。月の動き、風に揺れる枝、葉ずれやこずえのぶつかる音、アリなど昆虫の交尾……。私は自然を観察する。自然が霊感の基礎です」

 しかし、「民族芸能の舞台化」は自己否定にならないのか。

 「それはない。歌舞に込めた少数民族の世界は、失われることなく、むしろ舞台で濃縮するのです」

 22日まで。17日休演。1万500〜5250円。当日券などはBunkamura(03・3477・3244)。

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