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在日の一家いきいき 日韓合同舞台「焼肉ドラゴン」

2008年04月17日15時35分

 日本の高度成長の影で、在日韓国人社会に何が起きていたのか。そんなテーマを、関西の在日一家を通して描く舞台「焼肉ドラゴン」が17日、東京・初台の新国立劇場小劇場で開幕。02年の「その河をこえて、五月」に続く日韓の国立劇場による合同公演となる。5月にはソウルでも上演される。(藤谷浩二)

 大阪万博に合わせ、急ピッチで開発された69〜71年の関西の地方都市が舞台。国有地を不法占拠する在日韓国人集落が立ち退きを迫られる。ある時代のありふれた風景が消えてゆく様子が、在日1世の夫婦(申哲振、高秀喜)が営む焼き肉屋一家や常連客の騒動を通してつづられる。

 作・演出の鄭義信は在日3世。映画脚本では「血と骨」「月はどっちに出ている」などで在日を描いているが、「直球の芝居にするのは初めて」と話す。

 「いわば、逆『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界。暮らしが豊かになる裏で、僕より下の4世、5世には、自身が在日という実感すら持てない環境で育った人もいる。かつてこんな文化があったことを、どうしても書き留めておきたかった」

 国有地からの立ち退きは、兵庫県姫路市の実家の体験が元にある。「姫路城の石垣沿いにL字に広がった集落が故郷。父は戦後買った土地だと主張したが、通らなかった。友人には『実家が世界遺産になったんだ』と言ってます」

 実際に万博で消えていった集落も取材した。「70年前後は、日本の共同体そのものが崩壊を始めた時代。普遍性のある物語になったと思う」

 創作のもう一つの動機は二つの国と自分との距離だ。新国立劇場とソウルの「芸術の殿堂」という日韓の国立劇場が制作する舞台。「僕自身はどちらも祖国とは確信できない。棄民であり、マイノリティーだと自覚している」

 それを悲劇視したりはしないという。「韓国では、在日は貧乏かすごい金持ちという先入観がある。向こうで取材を受けると『苦労の歴史』なんて見出しになる。ワハハと笑って普通に暮らしていたことが韓国のお客さんにも伝わればうれしい」

 韓国の共同演出者・梁正雄と目指すのは、にぎやかな舞台だ。日韓の俳優、落語家、ミュージシャンが出演。日韓両国語が飛び交う本作を「ビビンパップ(ごちゃまぜ)演劇」と称する。「もうもうとした焼き肉の煙で劇場を包みたい。制作陣はすごく警戒してますけど」と破顔した。

 27日まで。千葉哲也、粟田麗、笑福亭銀瓶、朴勝哲、朱仁英ら出演。4200円、3150円。劇場(03・5352・9999)。

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