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野村萬斎、蜷川演出舞台で老武将熱演

2008年05月08日15時38分

 狂言師の野村萬斎が、蜷川幸雄演出の舞台「わが魂は輝く水なり―源平北越流誌―」で、平家の老武将を演じている。亡霊になった息子役は歌舞伎の花形スター尾上菊之助。ジャンルを超えて舞台の精鋭が集まった。萬斎は「他流試合ではなく、全員が一緒になってすばらしい作品をつくる場」と意気込んでいる。

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 萬斎が演じるのは、かつて幼い木曽義仲の命を救った平家の武将・斎藤実盛。60歳となり、白髪の老人となっても源氏との合戦の日々を送っている。死んだ息子・五郎の亡霊が現れ、弟の六郎(坂東亀三郎)は敵方の義仲軍へ走る。

 清水邦夫が80年に発表した作品。劇団民芸による初演では宇野重吉が実盛を演じ、演出も兼ねた。「平家物語に題材を借りた現代劇でもある。60歳は当時では相当高齢ですが、清水さんが40代の若さで執筆されたことも思うと、今の団塊世代に近い印象がある」

 蜷川演出は、アテネでも公演した「オイディプス王」(02、04年)に続き2作目。「前回は総当たりの格闘技のような役だった。今回は群像劇で、実盛は辛抱して相手の芝居を受ける場面が多い」

 日本の古典芸能は、先人が磨きあげた型を自身の体に入れることで、ある意味自動的に演じられる。だからこそ、全く違うアプローチで役を演じることが求められる現代劇への出演を切望していた。

 「相手のせりふを聞く中でどれだけ自分を育てられるかが課題。菊之助さんや亀三郎さんが苦労しているのを見ると、自分もそういうことに気づくようになったんだと感じます」

 芸術監督をつとめる世田谷パブリックシアターで「敦」「国盗人」を演出するなど、演出家としても話題作を生んでいる。「演劇をどうつくるか。スタッフワークまで含めて、とても勉強になる」。蜷川のけいこ場で、盗めるものはないかと目を光らせる。

 演出家としては、蜷川と異なる個性の持ち主だと自身を評する。「蜷川さんが堕(お)ちてゆく英雄の悲劇が好きなのに対し、狂言出身の僕は、どこかずっこけたアンチヒーローがヒーローになるような喜劇が好き」

 けいこでは、日々さまざまな演技を繰り出し、蜷川や共演者の反応から、さらに役をふくらませた。「本音で語り合う父と子から、もの悲しくもあり、おかしくもある人間の姿が浮かび上がれば」

 津嘉山正種、秋山菜津子、神保共子ら共演。27日まで、東京・渋谷のシアターコクーンで。1万〜5千円。Bunkamura(03・3477・3244)。(藤谷浩二)

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