現在位置:asahi.com>文化・芸能>芸能>舞台>演劇> 記事 「オットーと呼ばれる日本人」 英語・独語交えて臨場感2008年06月03日14時38分 木下順二の「オットーと呼ばれる日本人」が新国立劇場の上演演目に加わった。演出は芸術監督の鵜山仁。太平洋戦争が始まる直前に発覚した「ゾルゲ事件」を題材に、朝日新聞記者から近衛内閣のブレーンとなる一方で共産スパイ活動を続けた尾崎秀実(ほつみ)(オットー)の姿を鮮烈に描く。 劇団民芸による初演(62年)と再演(66年)がなかば伝説化されている名作に、どう新たな光をあてるのか。鵜山は戯曲の一部を英語と独語に変え、ゾルゲをモデルにしたジョンスン役のグレッグ・デールら外国人俳優も起用。国際諜報(ちょうほう)戦のリアリティーを現出させようと試みた。 オットー役の吉田栄作は颯爽(さっそう)とした美丈夫で、英語のせりふもこなす。冒頭、上海で2人が知り合う場面は、この新機軸が効果をあげる。だが東京に舞台が移る2幕以降、日本を救うために理想を語るオットーと、現実的な祖国喪失者ジョンスンが激突する場面での日英両語の応酬はやや不自然に映る(外国語は字幕あり)。堅固な論理で構築された戯曲だけに異言語間では対話が粒だたないのだ。 吉田は信念を持つ好漢を造形。半面、孤独の影は薄く、妻(紺野美沙子)への優しさに人間味が漂う。初演に別の役で出た弁護士役の鈴木瑞穂が重厚な存在感だ。永島敏行、石田圭祐、松田洋治ら男優陣が時代の雰囲気を醸しだす。演技エリアを巧みに切り取る照明(服部基)と回り舞台を駆使した演出は3時間40分の長丁場を飽きさせない。 総じて細部まで丁寧に作られた舞台だ。ただ「新劇の再発見」を芸術監督の方針に掲げた鵜山だけに、彼らが歴史変革の夢を託した共産主義について、現在からとらえ直す視点を打ち出してもよかったのではないか。(藤谷浩二) 8日まで、東京・初台の新国立劇場中劇場。 PR情報この記事の関連情報文化・芸能
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