一人称の映像の美学、佐々木昭一郎ドラマ再び脚光
2006年06月22日
「これはドラマなのか、ドキュメンタリーなのか。いや佐々木昭一郎というジャンルだ……」。NHKで優れたドラマを制作し、イタリア賞や国際エミー賞などを受賞した演出家佐々木昭一郎(70)の作品は、そう言われてきた。映画監督の是枝裕和や河瀬直美らが敬愛し、最近は若者の間でインディーズ的な人気だ。日本映画専門チャンネル(スカパー、ケーブルテレビで視聴可能)が、7月中旬まで全16作品を放送している。
佐々木ドラマは、主人公の「私」や「ぼく」の私的ドキュメンタリーを思わせる映像に、音や音楽が繊細に解け合って、豊かな味わいをもたらす。「言葉の余白を描いた映像ドラマ」と本人は言う。
初期の作品には、母親を知らない少年が母を捜し求める姿を描いた「マザー」(70年)、15歳の少年の漂泊の記録「さすらい」(71年)、夢の島へ行く少年の妄想と記憶が交錯する「夢の島少女」(74年)などがある。
当時は、多くの人が政治に関心を持ち、「我々は」「私たちは」と熱く語ったころ。「ぼくは、主人公を、『私は』『ぼくは』と一人称で語らせる映像にしたかった」という。主人公たちは誰にも寄りかからず、自分の内面や心の揺らぎを見つめ、作品は、人間が抱える普遍的な問いや葛藤(かっとう)を内在していた。
佐々木は「テレビは客観的であれとよく言われるが、ドラマは主観的でなければ成り立たない、やっかいな代物」と話す。若いころから自分の中で発酵させた、記憶や空想や妄想が源泉。「絵画や音楽に似て、ぼくの作品も脳のスパークや痙攣(けいれん)から生まれた主観の産物なんです」
役者には素人を多く起用。「何を考えて生きてるんだろう、と思わせる人が好き。俳優はわかりすぎて面白くない。わからないものを抱え、ストレートに表現できる人を街で探した。人間は本来、そういうものだと思うから」
80年代以降は、代表作「四季〜ユートピアノ」や「川(リバー)」の3部作、欧州テレビ局との共同制作も発表。大竹しのぶ主演の「八月の叫び」(95年)を最後に退職した。
「NHKに入ってラジオドラマを寺山修司と手がけた時、『これ、100年残すぞ』と言ったら、寺山に『300年残せ』と返された。今、再び視聴者の感性に語りかけることができて、感激しています」
現在はテレビマンユニオン所属。NHKを辞めてからは1作も手がけていないが、最近、また心が動き始めているという。
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