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〈視聴率のふしぎ・上〉収入直結、「安心効果」も

2006年11月30日

 「あの試合、視聴率○%もとったんだってね」

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今年の視聴率ベスト5

 いま開催中のバレーボール世界選手権のテレビ放映を巡って、家庭や職場でこんな会話が交わされているかもしれない。視聴率ランキングを掲載している新聞や雑誌も、少なくない。

 でも視聴率は元々、民間テレビ局と広告主が、テレビCMをどんな価格で何本ぐらい放映するかを決めるための指標にすぎない。

 「視聴率の高さが『みんな見てるんだなあ』という話題性、安心感につながっている」と日本大芸術学部の上滝徹也教授は話す。自分の好みにこだわる視聴者も増えているが、監督や原作から作品を選ぶことも多い映画などに比べ、テレビ番組は話題性の比重が高い。「みんなが見ているものを見たい」といった心理に視聴率が応えている。

 ドラマプロデューサーとして多くのヒットを飛ばしたフジテレビの亀山千広・映画事業局長も「映画なら劇場に足を運べば、自分の選んだ作品の人気が体感できる。しかし家庭で見るテレビはどれだけの人が見ているのか知るすべがない。視聴者にとっても、あるのは視聴率だけ」と話す。

 CMの売り上げが収入に直結するテレビ局は、なおさら躍起になる。

 バレーボール世界選手権の試合は毎日3〜4試合組まれているが、日本戦は必ず最後の午後6時にスタートする。午後7時からのゴールデンタイムに中継しているTBSは「ファンや視聴者が最も見やすい時間帯に中継するため、国際バレーボール連盟などと検討した結果だ」と話す。しかし、視聴率を稼ぎやすいゴールデン帯に、結果が判明していない日本戦を編成したいのは「当然のこと」に近い。

 連続ドラマの初回と最終回の放映枠を通常より長くするのも、作品表現上の要請だけでなく、最初と最後は視聴率が上がる傾向があるため。延長すれば、1日の平均視聴率を上げる効果がある。

 その視聴率とは、たいていは「世帯視聴率」。「対象世帯に置かれたテレビで放送と同時に視聴している世帯の割合」を示す。視聴率10%は国民の1割1200万人が見ている計算にはならない。10分の1の世帯の誰か1人が見ているだけかもしれないのだ。

 「世帯視聴率は、親子などその世帯の構成員を問わないのが前提。しかし生活習慣も家族形態も変わり、実際に誰が見ているのかに広告主の関心は移り始めました」と、資生堂マーケティング戦略室の浅野透課長は話す。

◇世帯から個人、変わる重点

 世帯視聴率への疑問が広告主に広がり始め、さらにゴールデン帯の視聴率も下がり始める。広告主は、どこにCMを投下すれば必要な購買層に効果があるのか根拠を求めたい。加えてネット上での広告効果に注目が集まる時代。

 ビデオリサーチ社でも、97年3月から関東地区で、世帯内の個人別に視聴状況を測定できるメーターを導入し、個人視聴率を調査している。これにより年齢や性別、職業などの属性ごとに視聴動向を探ることが可能になった。01年に関西地区で、05年には名古屋地区でもスタートした。

 こんな例がある。05年9月4日放送の「笑点」(日本テレビ系)は関東地区の世帯視聴率18.5%、同5日放送の「スーパーニュース」(フジ系)は同14.5%、同6日の「海猿」(同)は12.7%だった。しかし「独身OL」なら4.2%、6.4%、8.2%と世帯視聴率と順位が全く逆転する。狙いたい視聴層がある広告主には、世帯視聴率があまり意味をなさなくなり始めた。

 調査対象は、関東・関西・名古屋地区で各600世帯。年齢や職業などで対象を絞るほどサンプル数が少なくなり精度が落ちる。大手広告会社の担当者は「広告主側からは視聴率調査世帯のサンプル数を増やして欲しい、という声は常にあるが、増やせば調査費用は格段に割高になる」と話す。視聴率は、そのジレンマとも直面している。

 視聴率、この不思議なもの――。フジテレビの亀山局長はこう話した。

 「テレビは、作り手も見る方も密室のメディア。だから視聴率は、テレビ局の営業向けデータ以上の意味を負ってしまったのです」

 この多メディア時代、視聴率は、いつまでも「特別な数字」であり続けるのだろうか。

《40年前開始、27地区で毎朝集計》

 視聴率は、広告媒体としてのテレビのCM効果を測る目的で調査され、機械式の調査は60年代初めから始まった。日々の視聴率は現在、放送局や広告会社が出資する「ビデオリサーチ」社のみが集計している。

 総務省が定める日本の放送エリアは32地区あり、そのうちの27地区で毎朝、オンライン調査の結果を集計している。関東、関西、名古屋地区は世帯内で4歳以上の個人を別々に測れる個人視聴率も測定している。視聴率は常に誤差を含み、世帯視聴率の場合、対象600世帯地区で±1.8〜同4.1%の誤差があるとされる。

 番組と番組との間に流す「スポットCM」の場合、テレビ局の平均的な視聴率を元に料金が決定。スポンサーが「このCMを1200%分」という買い方をすれば、10%の視聴率なら120回放送しなくてはならない。20%なら60回でいい。視聴率が高い局ほど、CM料金を稼げる。

     ◇

 たかが数字、されど数字。03年には買収問題まで起きた、視聴率。そもそも何のためにあり、いまどんな状況にあるのだろうか。

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