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どう描く「自律」への道筋、放送倫理検証委員会が初会合

2007年05月26日15時10分

 テレビ番組の捏造(ねつぞう)などを調査・審理する「放送倫理検証委員会」が23日に初会合を開き、始動した。「発掘!あるある大事典」の問題を受け、NHKと民放で作る「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の新組織として発足。公権力の介入を招きかねない状況に直面した放送界が自律をアピールした面があり、放送局への勧告など強い権限を持つ。ただ、その力の使い方はしばらく手探りが続きそうだ。

写真初会合に臨むBPO放送倫理検証委員会の委員たち=23日、東京都千代田区で

◆「強権」の使い方、模索

 「放送界の表現の自由と活力を守っていくために、虚偽の番組を厳しく審議していく」。初会合後の10委員の会見で、脚本家の市川森一委員は明快に語った。勧告など委員会の強い権限は「表現の自由」を担保するためのものという。

 委員には、今国会に提出されている放送法改正案の新たな行政処分には「虚偽放送の判断などに行政の恣意(し・い)が入りやすい」(立教大教授の服部孝章委員)との見方がある。市川氏は「織田信長は本能寺の変では死んでいなかったという歴史ドラマが捏造だと拡大解釈される恐れがある」と心配する。

◆「第二総務省」

 しかし、どんな事案を取り上げるのかという判断基準は見えていない。

 委員会は通常の「審議」と、虚偽放送事案を調査する「審理」を分け、審理の結果として、第三者調査機関の設置などの勧告をテレビ局に出せる。勧告は「命令に近い」(広瀬道貞・民放連会長)。それだけに「しっかり問題を律するべきだ」という立場がある半面、「やりすぎると第二総務省になってしまう」という立場も根強い。

 委員長の川端和治弁護士は「審理対象を広げると、局の自律を待つよりもいちいちチェックするところまでいってしまう」と、抑制的な姿勢をにじませた。

 評論家の立花隆委員は委員会の「強権」について「総務省の御用機関的に放送を抑圧する側に回るのではという人もいたが、全然違う。そういう動きを防止するためにどうしたらいいのかと考えた組織だ」と強調した。

◆交番のイメージ

 日本大教授の上滝徹也委員は委員会を「交番」に例えた。視聴者と制作者の良好な関係を保つことが最大の役割で、気軽に苦情を相談でき、警察官が不在の時でも交番が存在するだけで住民が安心できる、といったイメージだ。その意味から、審理入りしないケースで納得してもらえる見解を示せるか、「審理入りしない場合が非常に重要になる」と話す。

 この何を審理対象とするかについて、初会合では、委員会の自主判断であることを改めて確認しあったという。委員会は既に、TBS系「みのもんたの朝ズバッ!」の不二家をめぐる放送について、関係者から審理入りが求められている。その扱いを含め、次の会議では今後の委員会の性格や方向性を決める必要があるが、どうまとめていくのか。

 弁護士の小町谷育子委員は「過去問題になったケースを振り返り、委員の間にコンセンサスを得るのはどうか」。上滝委員は「審議も審理も、机上の一般論では委員会のフレームを固められないだろう。方法論としては、個別のテーマを元に進められる議論で、おのずと固めていくしかないのでは」と話す。

◆「平時」の議論は

 委員会が審理と分ける審議は、捏造疑惑が浮上していないような「平時」に、全般的な放送文化の向上について話し合うことが想定されている。

 「あるある」問題で関西テレビの外部調査委員を務めた作家の吉岡忍委員は、同調査委が指摘した局と制作会社の関係のあり方のほか、中堅層の制作能力の向上、NHKの命令放送やCMなどを議論の対象に挙げた。

 漫画家の里中満智子委員は「制作者の盾になろうと委員を引き受けた」と話す一方で、放送界が抱えるより根本的な問題を指摘した。「制作者側が放送の影響力の大きさを分かっていないのではないか。そのギャップに早く気付き、手遅れにならないうちに修正しないと、視聴者から見放されます」

    ◇

【放送倫理検証委員会の委員】

川端和治 (弁護士、大宮法科大学院大教授)=委員長

村木良彦 (メディアプロデューサー)=委員長代行

小町谷育子(弁護士)=同

石井彦壽 (東北大法科大学院教授、元判事)

市川森一 (脚本家)

上滝徹也 (日本大教授)

里中満智子(漫画家)

立花隆  (評論家)

服部孝章 (立教大教授)

吉岡忍  (作家)

 =敬称略

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