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ドラマ、ますますマンガ調 「現実離れ」に視聴者なじむ

2007年07月28日12時28分

 男装して男子校に通うヒロインに、大金持ちの御曹司と勘違いされている貧乏大家族の長男――。マンガ原作のドラマが台頭する中、今季の連続ドラマには荒唐無稽(こうとうむけい)な設定やストーリーの作品が目立つ。CGなどを駆使し、マンガの一コマをそのまま実写化したかのようなオーバーな演出も増えた。「マンガ化」するドラマの背景には何があるのだろう。

 「この作品はフィクションですので多少のことは大目に見てください」。7月にスタートした「花ざかりの君たちへ」(フジ系)は初回冒頭から、こんな「お断り」で始まった。

 ヒロインが、あこがれの陸上選手のいる高校に男子生徒と偽って編入する少女マンガ原作のラブコメディー。現実離れした設定は、「偏差値より顔で生徒を選ぶ」といった具合に実写版でさらにパワーアップしている。

 従来、ドラマ化されるマンガといえば、職業ものや「東京ラブストーリー」に代表される恋愛ものなど、もともとドラマが得意とする路線と重なる作品が多かった。それが「ごくせん」「エースをねらえ!」「花より男子」などが実写化された00年代に入ってから、キャラクターや極端な設定を売り物にした作品も続々と選ばれるようになった。

 「ドラマの視聴者層がかつてのF1層(20〜34歳女性)から、ともにマンガに親しんでいる10代とその親世代に移った」と指摘するのは「花ざかり〜」を手がける森安彩プロデューサー(共同テレビ)。独自の設定は、少女マンガらしいドリーム感たっぷりな世界観を狙ったもの。「あり得ない設定はファンタジー作品のような感覚で楽しめる。リアルを重視したドラマだと不自然にみえる出会いや会話も、説明なしで使えるので便利」という。

 一方、同じく少女マンガ原作の「山田太郎ものがたり」(TBS系)を制作する瀬戸口克陽チーフプロデューサーは、「原作ファンが多く、非現実的でも外せないポイントがある」とする。「この作品なら、王子様と誤解されながら、貧乏な高校生が愛する家族のために頑張るところです」

 瀬戸口さんは、最近のドラマのストーリーに「王道回帰の傾向」をみる。今年前半ヒットした「花より男子2」ならシンデレラ物語、「山田太郎〜」はいわば、究極のホームドラマ。極端な設定とオーソドックスな物語の組み合わせが共感を呼ぶカギなのだ。「ただ視聴者の目が肥え、映像面では高度なレベルが求められている」とも。

 漫画の絵から飛び出したかのようなカメラワーク、演出が増えているのもその影響かも知れない。

 「たった2小節で間違えるなー!!」。楽譜を投げつけられ、奇声をあげて吹っ飛ぶ主人公……。昨年末に放送された「のだめカンタービレ」(フジ系)では、マンガでおなじみのシーンを、CG技術でほぼ忠実に実写化し話題になった。

 「あの場面をどう描くかは賭けだった」と振り返るのはフジテレビの若松央樹プロデューサー。「中途半端に現実を描くと、視聴者に作り手の裏側を見透かされそう。逆に、ちょっとしたひねりを感じてもらえたのかも」と話す。

 マンガ的手法はオリジナル脚本のドラマにも影響を与える。放送中の「ファースト・キス」を担当する若松さんは、「悪魔のようにワガママな妹」と「恋愛にだらしないダメ兄」という主人公の性格設定にマンガを強く意識した。「マンガはキャラクター至上主義。キャラに魅力があればストーリーがついてくる。ドラマも同じになってきた」

 こうした傾向について、テレビドラマを専門に研究する日大芸術学部の中町綾子准教授は「デフォルメした舞台設定や演出で生々しさは消える。コミカルな描写を楽しみつつ、登場人物の関係の中ににじみ出る心情に寄り添えるように仕立てている。マンガの影響でドラマ表現の自由度が広がってきた」と指摘する。

 「現実の生活では、割り切ってたくましく生きる人が増えた。例えば、失敗したことを悩み続ける姿を描いても、古くさく、かえってリアルな感情から遠ざかった表現に感じてしまうのかも知れません」

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